【え】
永遠頂戴(フィロソフィーのダンス)
イラストレーター・庭野リサ氏が描き下ろした3人のオリジナルキャラクターを用いた作品。
一見、止め絵が続くシンプルな映像だが、楽曲と連動するように映し出される歌詞がとても心地良い。
パワーフレーズである“女の子の若さと 艶肌は減価償却”をはじめとする、永く走り続けてきたフィロのスだからこそ歌うことができる歌詞を前面に出した“良いリリックビデオ”。
エキセントリック(欅坂46)
欅坂46の4曲目シングル『不協和音』と、最後までシングルの候補曲として争っていたという名曲。
クラスの中のマジョリティで、強い意志を持って孤独を貫くという内容。平手友梨奈をはじめ、欅坂46自体を見事に表現している。
木造校舎の中で無表情で歌うメンバーたち。片足のローファーを振り回す。片足のみ裸足で職員室、廊下、アスファルトを歩く。スクールカーストを表現する机ピラミッドに座るメンバーの位置。学校から逃げ出したけれど、外にはバリケードがあって抜け出せないことに絶望する菅井友香。踏切越しに鏡のように向き合う渡辺梨加と渡邉理佐。雨に打たれてずぶ濡れになりながら踊る少女たち。4分40秒のすべての瞬間が、すべて刻み込まれるキラーカットという恐ろしいほどのパワーに溢れたMVだ。
彼女たちがMVの中で表現した、マイノリティである孤高感。それは、クラスや仕事場にサークル等、さまざまな場所や場面で、他の人間とうまくやっていけない者の心を強く支えてくれる。
「孤立することへの恐怖に打ち勝てた。このカッコ良い少女たちは私を救ってくれた」当時、このMVを観た多くのマイノリティたちはそう思ったことだろう。
「欅坂46の最高傑作MV」と言うファンが多いのも頷ける。
エレクトロ・ワールド(Perfume)
2006年リリース。彼女たちが「近未来テクノポップアイドルユニット」と呼ばれていた00年代・ブレイク前のMV。デビューシングル『リニアモーターガール』、『コンピューターシティ』と続けて(今振り返れば)"当時空想していた近未来"が描かれている。
楽曲自体、00年代当時から「ライブの前半で披露し、会場の温度を一気に上げるもの」という立ち位置ではあったが、10年代前半ではセットリストから外れることが増加。その後、Perfumeが舞台演出に「プロジェクションマッピング」「ドローン」「3Dスキャン」などの“近未来的"なテクノロジーを取り入れた10年代後半にライブに返り咲いた……といった遍歴がある。このMVの世界観は今もなお、アップデートしながらライブに用いられている。
遠距離ポスター(AKB48・チームPB)
柏木由紀をセンターに置いた7人ユニット、チームPBの名曲『遠距離ポスター』。2010年2月にリリースされたAKB48のシングル『桜の栞』のカップリング曲として、チームYJの『Choose me!』(こちらも名曲)とともに収録されている。集英社の雑誌『プレイボーイ』(PB)と『ヤングジャンプ』(YJ)の誌面を使って2チームがバトルするという『神保町決戦』という企画から生まれた。
「ファンが部屋に貼っているアイドルのポスターは、『遠くにいるから会えない大好きなアイドルとの遠距離恋愛』のメタファーである」というコンセプト。友人たちの目には、可笑しく映るくらいにピュアなアイドルファンの気持ち。バカ真面目で、まっすぐであるからこそ心にズシンと響く歌詞だ。
そんな世界観をギュっと詰め込んだMVは、アイドルファンの心を掴みまくる。ポスターの中に入って、7人のチームPBメンバーたちのはしゃいでる姿を見ていると、思わず胸が熱くなってくる。
チームPBのセンターであった柏木由紀は、自身の卒業コンサートの最後の曲に『遠距離ポスター』を歌った。「シンプルにファンに向けた曲で、最後はファンに向けて歌いたかった」と、この曲を選んだという。