INTERVIEW

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ガチのドルオタ芸人・寺田寛明インタビュー「落ちサビで誰が来てもケチャりたいので、ペンライトは持ちません」

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コロナで自然発生的な盛り上がりが失われたんですよね

さて、ライブを楽しむスタイルってオタクによって千差万別だと思いますが、そのへんのお話も伺えたらと思います。細かいですが、ペンライトは持つのかとか、振りコピはするのかとか(笑)。

  • 寺田

    ペンライトはあまり持たないですね。クマリでたまに持つくらい。特定の1色にしたくないんですよね。落ちサビは誰が来てもケチャしたいというか(笑)。

現場では2色3色をパートごとに持ち替えたり、1本でこまめに色を切り替えるおじさんとか見かけますけど(笑)。

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  • 寺田

    その作業に集中力を持っていかれるじゃないですか(笑)! やることが増えて、見る集中力を削がれるのがイヤなんですよ。振りコピも同様で、やってて本当に楽しい動き以外はしたくない。それよりもちゃんとステージを見たいという。にちょがけ(二丁目の魁カミングアウト)の振りコピとかはめっちゃ楽しいからやるんですけど。困るのはアイドルが「この曲のサビは簡単で楽しいからみんなマネしてください!」って言うんだけど、そんなに楽しい動きでもないとき(笑)。
     自分そんな感じなんで、整理番号が良くても最前のドセン(真ん中)には行かなくて、でも目が悪いので上手や下手の前の方がベストポジションなんですけど、前に新宿のMARZ(比較的小さめのライブハウス)でその位置で振りコピしないで見てたら、アイドルの子から“やれよ!”って動きで示されたことがあって(笑)。そういうのもあるから和を乱さないように、申し訳適度にはやるようにしてます。今、声が出せないから、振りコピやクラップとかをやってないと盛り上がってないって思うんでしょうね。

その感じだと、モッシュやリフトをしたり、MIXやコールを叫ぶタイプでもなさそうですね。

  • 寺田

    コロナ前の、声出しやモッシュがOKの時もしてなかったですね。してなかったんですけど、何だろう……。アイドル見に行きはじめの時って、声出しとかモッシュとかリフトとか怖いじゃないですか。いまだにその感覚はあって。そういうグループの時は真ん中にいちゃいけないっていうのを学んでいて。やっぱ以前のゼアゼア(THERE THERE THERES)の『asthma』のサークルとか、何も知らないで巻き込まれたら怖い!

予備知識なしで最初に見た時は暴動かと思いました。

  • 寺田

    そういう時は箱の四隅のどこかに行くという(笑)。でもそれを見てるのは嫌いじゃなかったんですよ。昔TIFでPASSPO☆のライブ中にオタクがサイリウムを投げて問題になって……。僕まさにその現場にいたんですけど、ああいうのはダメだと思うんですけど、ゼアゼアのサークルはないと寂しいっていう。野外フェスでAppare!のオタクの人たちが土煙上げて騒いでるのは風物詩だな〜みたいな(笑)。今はまたコロナが厳しくなって難しいと思うけど、状況が良くなったら声出しとかの規制は緩和していった方がいいと思うんですよね。というのも……。やっぱりコロナ前は、オタクがフロアで勝手に盛り上げるみたいなところがあったじゃないですか。みんなで勝手にコール作って、みたいな。僕、プレイボールズ(絶対直球女子!プレイボールズ)が好きだったんですけど、プレボが本当にそういうのが多くて。「権藤、権藤、雨、権藤!」ってマニアックな野球ネタのコールとか。絶対飲み会で作っただろみたいな(笑)。それを一部のオタクがやり出して、「あ、楽しそうだな」ってみんなに広まって行って盛り上がるみたいな。それがグループや現場全体の盛り上がりに繋がってた面が確実にあったと思うんですよ。そういう自然発生的なノリが、コロナ以降封じられちゃったのは、地下アイドルの現場にはすごいマイナスだったと思うんですよね。

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どうしても閉塞感を感じてしまう現状ですが、シーンに対する処方箋はありますかね? こうやったら全体が盛り上がるとか、端的に個々のグループが売れるとか?

  • 寺田

    難しいですけど……。最近時代が変わってきたなって思うのが、僕はお笑いのほかに塾講師の仕事もやってるんですが、この前生徒の子が急に「comの子が可愛い」って言い出して。

c、o、mのcomですか!? 楽曲派のすごい良いグループですけど、まだまだ知る人ぞ知るというか、今年に入ってエクストロメ!!に呼ばれ始めたくらいの……。

  • 寺田

    そう。「自分も最近見たばっかだけど!」っていう(笑)。インスタで流れてくるらしいんですよね、画像が。それきっかけで興味持ってっていう。最近の若い人のSNSでの情報の広がり方って、ちょっと僕らの想像を超えてる感じだな〜と思いました。逆に最近新しくできるグループって、もともとインスタのフォロアーが何万人もいるインフルエンサー的な子が“アイドル始めます”ってパターンも多いですよね。
     ただ、よくある地下ドルのSNS施策って、TikTokの動画を個人で上げたりとか、YouTubeにメンバーのプライベートの動画載せたりとかじゃないですか。あれって結局今いるオタクに働きかけてるだけでバズりはしないし、お客も増えないと思うんですよ。ちょっと前にFRUITS ZIPPERの『わたしの一番かわいいところ』がTikTokでバズって話題になりましたけど、あれは狙って狙ってちゃんとバズった感じですごいなって思います。ちゃんとコツをわかった上で、クオリティの高い形でやると成果が出るという。

それこそ、ふぇのたすのヤマモトショウさんの曲ですね。とりあえず地下アイドルはインスタに画像を上げよう! プロデュース側はTikTokでバズる曲を作れ! 的な。

  • 寺田

    今の状況ではそれも1つのやり方ですよね。ただ重要なのは、もうちょっと受け手がどう楽しんでるかを意識して欲しいってことかもしれない。SNSのバズりもそうなんですけど、さっきも言ったようにライブで声出しができなくてオタクが自主的に盛り上げるのが難しい状況だと、別の形でお客の参加意識を誘導してあげる必要があると思うんですよ。
     それは今の状況だとやっぱり振りコピだと思うし、大規模フェスで強いグループって、みんながやりたがるような特徴的で面白い振りの曲があったり、初見で誰でも振りコピできるような、外向きの曲が絶対あるじゃないですか。それがあるだけで、フェスや大規模対バンで新規客を巻き込める度合いがぜんぜん違うと思うんですよね。またプレイボールズの話になっちゃうんですけど、『ダイビングキャッチ』って曲で、野球のダイビングキャッチの動きをみんなでやる振りがあって、単純なんですけど、それ1個あるだけでぜんぜん楽しかったんですよね。

そのグループの名物的な感じで、そこのオタクじゃなくても、対バンでいたら「アレやりに行こうぜ!」ってなる感じの。

  • 寺田

    そうそう! コアな楽曲派のグループも、そういう曲が1つあるだけで広がりがぜんぜん違ってくる気がする。

寺田さんはベースは楽曲派的な感性をお持ちながら、そういう“沸き”的な部分も楽しめるところが、オタクとして、なかなかいそうでいないスタンスの方だな〜と思いました。

  • 寺田

    そうですね。楽曲やパフォーマンスのクオリティーで感動させるのも大事だけど、地下の現場はやっぱり参加意識が大事っていうか、そういうお祭り的な部分も欲しいですよね。単に見てるだけだったら、同じグループのライブを何度も見に行くモチベーションが持たないと思うんですよ。

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