INTERVIEW

INTERVIEW

コロナがアイドルに与えた影響を学術的に調査したアイドル。結論は「コロナは関係なくないじゃんっ!」

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地下アイドルの運営って本当に自転車操業なんです

あとコロナ前後のアイドルとファンの増減についても言及していますよね。

  • 雲野

    これについては資料や情報をとにかく当たって調べました。南波一海さんのようなアイドルに詳しい方の原稿や、アイドルとオタクのTwitterのツイートなんかを片っ端から読んだ結果、オタクの数に比べてアイドルの数が多い供給過多状態なのは2019年も2020年も変わらないんですけど、オタク・アイドルのどちらもその数は確実に減っているし、じゃあどこに行ったのか? っていうと……。

「大図解」にはコンセプトカフェや夜職に流れがち、とありますね。

  • 雲野

    2020年4月に緊急事態宣言が出たときライブハウスの営業はダメになったけど、飲食店は営業時間や一度に入れるお客さんの数に制限はあったものの営業はできていたじゃないですか。アイドル活動を続けながら、副業的に飲食を選んでいる子たちも少なくはないんですけど、「飲食だったら稼げるじゃん」ってなったアイドルもけっこういたみたいです。

そしてアイドルが飲食に転職したら、そのファンも「あの子に会えるじゃん」とその店に通うようになった?

  • 雲野

    それを裏付けるデータのひとつに名古屋のコンカフェの出店状況があって。2019年には7店だったのに対して、2020年は30店がオープンしているんです。その間に潰れたお店もあるですけど、それでもコロナ禍を境に13店舗も増えている。もしかしたら名古屋特有の傾向で、全国的に調査してみるとまた違った結果が出るのかもしれないんですけど、それでも注目するべき数字だとは思っています。

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その結果、アイドルシーンに変化ってありました? 人材が流出したことによって市場が縮小してしまったのか? それとも少数精鋭化したのか?

  • 雲野

    少数精鋭化したんだと思っています。「コロナになって声援をもらえなくなっちゃって寂しい」「オタクと盛り上がりたい」というアイドルや、「○○ちゃんにひんぱんに会いたい」というオタクはコンカフェに流れて、純粋に歌やダンスをやりたい人たち、応援したい人たちが残ったんでしょうね。というのも、地下アイドルの運営って本当に自転車操業なんですよ。

セルフプロデュース・セルフマネジメントだった回グルメンバーが言うと説得力が違いますね(笑)。

  • 雲野

    止まったが最後、あっという間に転んじゃうし、止めようと思ったら簡単に止められちゃうんです。「大図解」を制作しながら、そもそもそういう業態な上に、コロナという不安があっても続けたい人だけが続けているんだろうな、ということに気付きました。

それによって楽曲のテイストやライブパフォーマンスにも変化はありそう?

  • 雲野

    曲もダンスもとにかく勢いで押すガムシャラ系アイドルは厳しくなったのかな、という気がしています。ライブハウスの床に貼られたバミから大きく動けないオタクにどうやって自分たちのパフォーマンスを観てもらうか、曲を聴いてもらうかを必死に考えているアイドルが目立つようになったというか。オタクが立ったままでも振りコピできるような振り付けを考えているアイドルがけっこう増えてきてますよね。

確かに。ちなみに具体的に注目しているグループっています?

  • 雲野

    杏ちゃんが今所属しているChick-flickは「めっちゃコロナ禍のアイドルだな」と思っています。杏ちゃんに話を聞いたんですけど「演劇やミュージカルみたいな"作品”を劇場で観ているようなグループになるはず」って言っていて。

実際、Chick-flickは楽曲自体はスウィングやジャイヴをベースにした踊れるものではあるものの、パフォーマンスはフロアを煽るものではない。すごくシアトリカルですよね。

  • 雲野

    オタクがライブハウスのルールを違反してまで声を出したりしなくても、ちゃんと盛り上がるライブをしているから「うまいコンセプトを考えたなあ」「イマドキだー!」と思いながら観ています(笑)。あとオタクの合いの手が入ることを前提にした作曲法をやめているグループもいますし。

以前は、サビ前にオタクに「イエッタイガー!」って叫んでもらうことで完成するように作られたアイドル楽曲って少なくなかったですよね。

  • 雲野

    回グルも楽曲制作をお願いしていたのがアイドルに詳しくないクリエイターさんたちだったから、デビュー前には、ほかのアイドルさんの動画を観てもらって「ベースはテクノなんだけど、こういう感じでコールを入れられるフレーズは作ってほしい」ってお話をさせてもらっていました。でも、今は基本的にオタクは声出し禁止だから、逆にコールが入ることを計算しない曲作りができるし、しているグループが増えてきている印象があって。だからアイドルソングの表現の幅は拡がっているんだろうな、と思っています。あとそういう曲が増えると、コロナ前の若いオタクが大騒ぎする現場が苦手だった人にとっては居心地がよくなるかもしれないですね(笑)。

中年オタクにも優しい現場が増えるかも、と(笑)。