私の人生、まるっとアイドルで、アイドル抜きに語ることなんてできない
■学生として生きる自分 ―現実―
自分のアイデンティティについて考える瞬間はアイドルでいる時だけではありません。学生として生きる時も迷いが生じます。
私は「実はアイドルやっています」的なことは自ら言わないようにしています。もし向こうから聞いてきてくれたら答えるくらいの感じです。ちなみに「アイドルなの?」と聞いてもらえた時はこっ恥ずかしさもありつつ、知ってくれているんだという嬉しさもあります(笑)。
■言わない選択は本当に吉か
バイト何かしてる……?
休みの日何してるの……?
就活もう終わった……?
アイドルをやっていることを「言わない」選択をとるとこのような質問には正直に答えられません……。その場その場でうまく切り抜けはするんですけど、少し後ろめたさを感じることもあります。アイドルであることを気づかれないで終わることがほとんどですが、それでも知られたら、「え、嘘ついてたの?」ともなりかねないので。知っていても気を遣ってくれて言わないでいてくれている場合もあると思いますし。信頼をなくすかもしれない、その覚悟は常に持っています。
私ごときがそこまでしなくても、とも思いますが、これまでの経験上その方が、「安全だしお互いが幸せだ!」と実感しているので、基本的には自分からは言わないというスタンスを貫いています。

■アイドルであることを打ち明けた日
自分のことを必要以上に話さない。それは今も変わらないのですが、一回だけ「私アイドルをやっています」と授業内で“発表”したことがあります。ただ言うだけじゃないです。30分くらいの発表です。どんな心境の変化があったのか話してみたいと思います。
■私のナラティブを話す
その授業は「ナラティブ」をメインに進んでいく授業でした。「ナラティブ」というのは簡単に言うと、「語り」です。その授業では、「今、そして未来は過去の体験した『語り』によって説明でき、その『ナラティブ』という言語的コミュニケーションが自己理解、他者理解に繋がる」(あくまでひとつの思想)といったような趣旨の内容が扱われていました。頭が混乱してきますが、今の自分があるのは過去にやってきたものがあるからだし、自分のことを他人に明かすことによって、その人を信頼できるようになったりもするよね、という話です。
授業内の最大のミッションは「自身のナラティブを話す」でした。そのクラスは10人前後のメンバーで構成されていたのですが、それでも「自分が何者か」を把握できていない私にとって高い壁でした。
最初は私の中の「アイドル」を全部抜きにして話そうと思いました。普通の学生として生きてきた自分がいるし、その経験をもとに話せることはある、そう思っていました。だけど、構成を練り始めて気づきました。実際アイドルの話を抜きにしたら何も語れない!!!!
たとえば小中高大の部活動、演劇、軽音、ダンス、ぜんぶ表に出るものを選んだのは、いつかアイドルになれた時の良い経験になると思ったから。
「なんで大学院に進学したの?」と聞かれたら、アイドルになってから、アイドル・ファンのことをもっと知りたいし、研究したいって思ったから。
他にも細かいことも含めて、私が今ここにいる理由を樹形図にして遡ってみたら、全部がアイドルに繋がっているなってことに気づきました。私の人生、まるっとアイドルで、アイドル抜きに語ることなんてできないなって思ったんです。だからこの授業内では、全部を正直にさらけ出しました。私が大学院に来た理由、アイドルになりたかった過去、先生も生徒もすごく興味を持って聞いてくださって嬉しかったですし、こんな自分を認めてくれる世界を知って少し自信が持てました。

■アイドルでいる私と学生でいる私、両方認めてあげればいいじゃないか
アイドルになってから今まで「私のアイデンティティ」って何なんだろう。漠然と抱えていた不安。私が自分自身と向き合うことがそこまで得意じゃないというのもあるし、周りが社会人になって大人の階段を上っていくのがそれを加速させていたのかもしれません。でも今は私なりに行き着いた持論があります。「アイドルでもあり、学生でもある」。これが私の現時点での答えです。そんなん知らんし勝手にしろって感じですかね(笑)。でも意外とこのシンプルな考えが私を助けてくれています。どっちでいる自分が良いとか悪いとかではないし、負の側面だったとしてもそれを裏の顔とか思わなくていい。どんな自分も私の中にあるひとつの面だから、認めてあげられたらいいなと第三者の自分は思っています(誰? 笑)。他人に迷惑をかけること以外はですけどね。
■誰しもそんな単純には語れない
最近思うのは、分類したり、なんかある界隈に属したりするみたいなことって安心するしみんな結構好きなのかなと感じています。確固たる例としてMBTI診断とかがそうで、なんとか診断とかすごい流行っているじゃないですか。エンタメとしてすごく面白くて私も結構好きなんですけど、でも果たしてそれだけでその人のすべてを網羅できるかというとそうでもないと思います。人間が16タイプしかないなんてそんな怖いことはないし、同じ診断がきても違う部分はそれぞれきっとあるはずで。
私も研究で「こういう傾向のある人は、こういう行動をしやすい」とか言うことあるけれど、それがすべての人にあてはまるわけではないじゃないですか。
だから自分がある型にはまっていないから、はずれ値(少数派)なんじゃないかとかは思わなくていいし、もしも私と似たような迷いを抱えているひとがいたら、複数の側面を愛してあげてほしいなと思います。

■現実より理想が強かった
ここまで「アイドルの理想と現実」というテーマで今回はお話させていただきました。思ったより長文になってしまい自分でもびっくりです(笑)。ちょっとシビアな話もしましたが、それでも私にとって「アイドルの理想」は今も昔も何にも代えがたいんですよね。すごくキラキラしていて一度踏み入れたら抜け出せないです。
小さい頃、AKB48さんに憧れて希望を胸に会いに行ったあの日。眩しくて可愛くて、優しくて、もうこれしかないとビビッ! と来た瞬間。この感覚を私も誰かに届けたい。そんなアイドルになりたい理想があってここまで活動を続けることができています。応援する側だった私が応援される側になっている今が本当に嘘みたいで、どんなに辛い現実があったとしても、夢みたいな現実を私はラフ×ラフで長く見続けたいなと思っています。
■さいごに
正直この文章が世に放たれるのはゾクゾクします。アイドルとしての私を好きな人には知られたくないし、吉村萌南を好きでいてくれる人にはぜひ知ってほしいような、そんなわがままな内容だったのかなと思います。ほとんど自分語りになってしまったのですが、次回以降は私の大学院での研究やファン心理などについて実際のデータなども用いつつ、お話しできればなと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。また次回のコラムでお会いしましょう! ごきげんよう!
PROFILE
吉村萌南(ラフ×ラフ)
よしむら・もなみ
2002年5月16日、神奈川県生まれ。A型。オレンジ担当。ニックネーム「もなみん」。
趣味は動画編集、カクテル作り、ピアノ。
特技はバルーンアート、百人一首、国旗の暗記、英会話。
オフィシャルホームページ
https://roughlaugh-official.com/文・写真/吉村萌南(ラフ×ラフ)
