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『ちゅ、多様性。』やバラエティで大ブレイク! あのちゃんはなぜ売れたのか? その魅力とは?

ガラスガールano

ブレイクの理由③ライブを重ねる内に身についたアーティストとしての存在感

ここまで、アイドルとバラエティの面からブレイクの理由を考察したが、最後はメインの活動であるアーティストの面から考察する。

あのちゃんがグループを脱退したのは、コロナ禍の前、2019年9月。その理由については、今年4月配信の『あのちゃんねる』でファーストサマーウイカと対談した際に打ち明けている。

(アイドル時代を作れて)一区切りついて、やめるしかなくて、気持ち的にもダメになっちゃってたんで。ぼくはそこから音楽も演技もバラエティも何にもするつもりもなくてやめたので。もう引きこもり生活に戻ろうという感じで。
(あのちゃんねる 2023年4月11日配信「#5【こんなこと話したことない…初告白‼】ファーストサマーウイカ対談&山里さんについてぶっちゃけ」)

脱退して1年後、2020年9月にano名義でソロ活動を開始しMVも6曲公開。翌年にはバンド「I’s」結成。2022年4月にトイズファクトリーに移籍しメジャーデビュー。そのわずか7ヶ月後の11月にデビュー3曲目の『ちゅ、多様性。』が大ヒットした。

『ちゅ、多様性。』MV

ここで気になるのは、グループ脱退からソロになりブレイクするまでの期間がコロナ禍だったということ。その影響について大坪氏の考えをうかがった。

「あのちゃんの魅力のひとつはライブなわけですが、脱退後しばらくライブができない期間があったのは、より本人自身の本質を研ぎ澄ませて見せるにはちょうどよかったのではないでしょうか」

また、ゆるめるモ!やあのちゃんをあまり追ってこなかったアイドルファンや、バラエティ番組からあのちゃんを知った人からすると、「急に『ちゅ、多様性。』でブレイクした」「歌も歌えるんだ」というイメージがあるかもしれないが、グループ加入時から歌の素質はあったのだろうか。

「正直、声は小さいし、ソロ歌手のイメージはどう考えてもなかったですね。ただ、歌はおいといてステージの存在感は日に日に増していって、歌もそれについてきたというイメージです」(大坪氏)

あのちゃん本人は、2022年1月に佐久間宣行氏の代打として『オールナイトニッポン0』のラジオパーソナリティを務めた際、「“歌”ではなく、“ハートの方の”アーティスト。“マインドアーティスト”(笑)」と、自己紹介。

唯一無二の歌声に惹かれるのはもちろん、それに加え、ハートの部分やパフォーマンスが全面に出ることで存在感が増し、アーティストとしてのブレイクにつながっているのだろう。今年3月に配信された『THE FIRST TAKE』でもその歌唱力や表情の豊かさ、ハートの部分で本人が楽しんでいる姿が確認できる。

ano - ちゅ、多様性。 / THE FIRST TAKE

話は脱線するが、佐久間氏の代打の一年後、あのちゃんは『オールナイトニッポン0』のレギュラーに。アニメ声のような独特な声、そこから発せられる歯に衣着せぬコメントは面白く、声も張っていてテンションも高い。弾き語りも聴き心地が良い。これはラジオだからこそわかる魅力だろう。

前出のファーストサマーウイカとの対談では、アイドル時代から現在までで発声や喋り方が変化していることについても言及している。

発声の仕方がまず分からない次元だったので、人ともメンバーとも会話が何年かできていなかった。“おはよう”って言うこともできないくらいずっと胸が緊張した状態で声が出ていかない。インタビューとか受けていても声の発声の仕方がわからなくて。(ソロになって、)MCの人へ声聞こえないとダメって言われたし、ラジオだったら普段の喋り声でよかったりするけど、頑張って声を張ったりすると音の色が変わる。
(あのちゃんねる 2023年4月4日配信「#4 【本音で密室トーク】ファーストサマーウイカ対談【あのちゃんねる#4】」)

デビュー当時は声もそうだが、前出の『ゼロからでも始められるアイドル運営』で田家氏は、あのちゃんは笑顔も引きつり顔面神経痛になってしまうほどだったが、「だんだんと笑えるようになり、ファンと方と触れ合うことによって、自分の中に秘めていたいろんなものがスパークしたみたいです」と振り返っている。

今年でデビューから10年。喋り方にしても新しいステージに進むために工夫し、成長してきたことを考えると、それは誰もがどの場面や仕事でも同じことで、きっとこれまでのその努力が見る人を前向きな気持ちにさせるだろうし、多様性と言われる現代に共感を得られ、より必要とされる人物になっていくのではないだろうか。

取材・文/赤木一之 イラスト/川崎タカオ