ブレイクの理由②『あのちゃんねる』で鍛えられたバラエティ力
前出の『10年続くアイドル運営術』で田家氏は、あのちゃんのブレイクのきっかけとなったのは、2015年9月に開催されたフェス『夏の魔物』で撮られた一枚と語っている。橋本環奈の「奇跡の一枚」とは別の意味で、かわいらしさとのギャップがあるあのちゃんのクレイジーな表情は、大きなインパクトを与えた。
そして、この写真がきっかけで2015年後半、「一気にあの人気が跳ね上がり、ゆるめるモ!の知名度が上昇し始めます」と田家氏は記している。
その後、2016年3月にテレビ東京『ゴッドタン』で注目のアイドルの一人として紹介され、4月より『ほぼほぼ〜真夜中のツギクルモノ探し〜』〜『深夜に発見! 新shock感〜一度お試しください〜』に2年以上レギュラー出演。以降、ドラマ出演、モデル活動、写真集の発売と、さらに活動の場を広げていった。
ゴッドタン出演後のあのちゃんのInstagramの投稿
https://www.instagram.com/p/BDlZL2jFDuy/
ちなみに、『夏の魔物』の写真がバズる前、もうひとつアイドル界隈をザワつかせたのが、同年5月に開催された赤坂BLITZワンマン前に公開された宣伝活動動画だ。雨の中、あのちゃんが竹下通りの真ん中にちゃぶ台を広げ、平然と甘エビを食べるという映像。この発想とパフォーマンスに意表を突かれた人も多いのではないだろうか。
こういったパフォーマンスについて、過激パフォーマンス集団・電撃ネットワークのメンバーであり、アイドルイベント『ギュウ農フェス』主宰のギュウゾウ氏は、あのちゃんを見た時から「モノが違う」と感じたそう。
「骨格、骨組み、感性からして、普通の人じゃない感はあった。例えば、あのちゃんと同じく、元ライブアイドルからブレイクしたファーストサマーウイカちゃんは普通のこともそうでないこともできるけど、あのちゃんは普通のことができない。どこか街に溶け込めない違和感というものは感じていた」
そんなあのちゃんが『ギュウ農フェス』に初出演したのは、2015年6月の羽田空港でのホール開催時。ゆるめるモ!はトリ前に登場し、ライブ後半、ビニールボートを持ち込んで観客の上をサーフ。その盛り上がりにあのちゃんは、「今日はすごく楽しいし嬉しい」と、いつものゆっくりとした口調でギュウゾウ氏に伝えていたそうで、その礼儀正しい姿も印象的だったとか。
「今も、芸風変わらずそのまま売れたという印象。テレビ側がよく起用したと思うし、いいタイミングであのちゃんを理解してくれる制作の方やタレントの方々と出会えて、仕事ができているんだなと思います。周囲の実力ある人たちを従えられる才能がある」(ギュウゾウ氏)
確かに、筆者自身、『ほぼほぼ』〜『新shock感』を見た時は、口調も反応もマイペースでコメントが時々辛口で個性的だと思ったが、今のようにお茶の間に浸透するとは想像もしていなかった。
大坪氏も、「バラエティに出るイメージが全くなかった」としつつも、「ライブではMCの流れでなんとなく最後にあのちゃんにふる、みたいなのはちょいちょいあったのでそこで喋る度胸みたいなのは当時からあったのかも」と、回想する。
あのちゃん本人は、バラエティでの広がりはテレビ朝日『バラバラ大作戦』枠の冠番組『あのちゃんねる』(2020年10月〜2021年9月に地上波で放送、今年3月よりYouTubeチャンネルで復活)の影響が大きかったと話している。
(あのちゃんねる 2023年2月24日配信「#0 あのちゃんがあの件についてお話しました。【緊急生配信】」19:15より)
また、『ほぼほぼ』〜『新shock感』でMCの山里亮太と絡んできたものの、「バラエティはほぼ何もルールとか知らない状況で、バラバラ大作戦はよく冠を(ぼくに)くださったなという感じ。わからないままやってたから収録前はいつも泣いてた。今だにわかんない」と吐露している。
その後、バラエティで大きな反響を呼んだのが、2021年10月放送の『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画「『ラヴィット!』の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すれば、レギュラーメンバーより笑い取れる説」。この女性ゲストとして出演したあのちゃん。千原ジュニアや粗品ら実力派芸人を従え、『ラヴィット!』MCの川島明にドッキリを仕掛けて見事成功させた背景には『あのちゃんねる』の成果があったのかもしれない。
バラエティでのブレイクは、元々の感性と、周囲の人たちとの出会いとタイミング、“従えられる才能”、そして、鍛え磨かれていくトーク力の強さがありそうだ。