INTERVIEW

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【推しの子】ブームで「歌ってみた」「踊ってみた」動画が大量発生! ライブ映像を作り上げた小熊りん(CUBΣLIC)が語る【推しの子】の魅力とは?

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アイドルの苦労や心情に共感するんです

原作ファンを自認する小熊さんの考える『【推しの子】』の魅力って?

  • 小熊

    語りきれないですっ!

それでもお願いしますっ!

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  • 小熊

    ……ノンフィクションな感じがするところかなあ。

へっ!? 産婦人科医のゴローが推しのアイドル・アイの子どもに転生するところから始まるお話ですよ?

  • 小熊

    だから言葉を選んじゃうんですけど、アイドルであることの苦労みたいなところに共感できるというか。もちろん「それはさすがにないかな?」と思う場面もあるんですけど、いつでもかわいすぎてキラキラしている生まれついてのアイドルのアイちゃんですら、他人には見せていない努力や悩みがあるんだな、っていうところはすごくノンフィクションっぽくて。そこが「笑える」という意味ではなく「面白いな」、と思っています。

確かにいろいろな切り口のある作品……転生モノ=ファンタジーであり、ミステリーやサスペンス、復讐譚でもある一方で、お仕事モノでもありますね。

  • 小熊

    そうなんですよね。ステージが一番楽しい、みたいな描写も本当にその通りというか、ライブがアイドルを続けるモチベーションになっているところにはすごくうなずけますから。

ただ『【推しの子】』全体を貫くキーワードに「嘘」がありますよね? 「アイドルは嘘という魔法で輝くものだ」「嘘はとびきりの愛なんだよ」「むしろ客は綺麗な嘘を求めてる」と「嘘」がある種美しいもの、正しいものとして語られています。

  • 小熊

    でもアイちゃんは誰かを陥れるための嘘をついているわけではないじゃないですか。今、自分が言っていること、していることを本当のことにしたいから「嘘」をついていただけで。

実際「愛したいと思いながら愛の歌を歌ってたよ」「いつかそれが本当になる事を願って」と言っていました。

  • 小熊

    「私にとっての嘘は愛」「今だって君の事 愛したいって思ってる」とも言っていたし、アイちゃんは刺したファンの名前すらもちゃんと覚えていた。だから言っていることは全部嘘じゃないし、愛がない嘘でもないんですよね。確かに私自身は「嘘は愛」とは言い切れないし、言い切りたくはない部分もあるんですけど、相手のことが好きだからこそ嘘をつく感じには、ちっちゃいけど強い共感を覚えています。

じゃあ一番お気に入りのエピソードってどれですか?

  • 小熊

    全部好きなんですけど、あえて言うならアニメの第1話ですね。何回泣いたかわからないくらい泣きましたから(笑)。まずテレビの音楽番組の収録シーンで歌っているアイちゃんの姿があまりに輝いていたので「アイちゃんは二次元で私は三次元だけど、こんなふうにキラキラしたい」ってマジ泣きして、直後の「——うちのアイは本物(マジモン)の嘘つき(アイドル)だぞ」っていう社長のキメゼリフでまた泣いて。もちろん最後のシーンでも泣きましたし。

さっきのお話にあった“愛ある嘘”にまつわる言葉が交わされる場面でもあります。

  • 小熊

    過呼吸になるくらい大泣きしました(笑)。アイちゃんが悲しい事件に巻き込まれている ので「よかった」とは言い切れないんだけど、たった80分ちょっとの時間の中にあれだけのエピソードを盛り込んだ上に、あんなに感動的にラストシーンを描いていたから、すごくいい第1話だったな、と思ってます。

アニメ第1話は90分スペシャルと放送時間が長かったとはいえ、コミックス1巻分という長大なお話をまあテンポよく映像化したもんだ、って感じでしたよね。

  • 小熊

    しかも時間の制約があるからってどこかのシーンを省略したりもしていなかったので、全然違和感なくお話にのめり込んで泣けました(笑)。

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劇中に推しメンっています?

  • 小熊

    重曹ちゃん……有馬かなちゃんです。

“重曹を舐める”こと“10秒で泣ける”元・天才子役で、のちにアイの娘・ルビーと一緒に新生B小町のメンバーになる女優ですね。

  • 小熊

    私自身、もともと声優の専門学校に通っていたり、演技のトレーニングをしたりしていたこともあって、ちょっと気持ちがわかるんです。子どものころから役者をやっていたんだけど、大人になって正直売れなくなっていたところにアイドルになるチャンスが巡ってきて葛藤する感じとか。でもアイドルの道を選んでキラキラなかなちゃんはすごく素敵だったし、そのキャリアの積み重ね方は自分に重なる部分もありますし。

    でも、原作者のおふたりは、なんでこんなに元役者の気持ちがわかるんだろう? 実際に子役だったのかな? アイドルだったのかな? っていうくらいリアリティがありますよね?

もちろん派手にデフォルメされている点も多々あるんですが、アイドルビジネスから恋愛リアリティショーや2.5次元ミュージカルについてまで、どれだけ取材しているんだろう? っていうくらい、それぞれの舞台裏をしっかり描ききっています。

  • 小熊

    赤坂先生は『かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』のころから、夢みたいにキュンキュンするんだけど、読んでいる私たちがちゃんと身近に感じられるリアリティもあるお話を描いていたから、いろんなジャンルについて調べるのがお得意だし、お好きなのかもしれないですね。

対する横槍メンゴ先生についての印象は?

  • 小熊

    もともと『【推しの子】』は『クズの本懐』の横槍先生の作品だから読み始めたくらいのファンです。どんな小さなコマでもすごく繊細でキレイな絵を描かれるところがまず好きで、お話もすごく細やか。絵と同じように繊細な物語を作る人だと思ってます。

『クズの本懐』がまさにって感じですが、市井の人たちのいやらしさや、えげつなさを容赦なく見つめる作家でもありますよね?

  • 小熊

    そうやって自分にも見えていない自分の気持ちの奥底みたいなものを描いてくれるから、繊細な感じがするのかもしれないですね。

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原作好きな小熊さんが熱く語ってくれたように、【推しの子】の魅力は、数え切れないほど盛りだくさん。小熊さんのように、その魅力について語り合ったり、歌ったり、踊ったりする人々が増えていくだろう。アニメはここから終盤戦。さらに広がる【推しの子】ワールドに来週も目が離せない。

PROFILE

小熊りん(CUBΣLIC)

こぐま・りん
2022年4月、アイドルグループ・CUBΣLICに加入。フューチャーベースやEDMを主体にした、ボトムヘヴィなトラックに乗せて、アイドルポップならではのキュートなメロディを歌い、首都圏ライブハウスを中心に活躍。7月29日には恵比寿CreAtoで、彼女の念願だった舞台公演とライブの2部制イベント「A.I.」を開催する。

オフィシャルホームページ

https://www.hvt-inc.com/

取材・文/成松 哲 撮影/高澤梨緒