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【マンスリーアイドルコラム No.082・初週のみ無料公開】ラフ×ラフ 吉村萌南 #1「研究①アイドルの理想と現実」(7月水曜担当・全4回)

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「これって本当の自分なのかな」という壁にぶつかります


■横軸でみる「アイドルの理想と現実」

 「アイドルと学生両立しています」とは言いますが、実際私の生活に占める割合としては“アイドル”として意識的に過ごす時間の方が長いかなと思います。それは表に出ている時だけではなくて、裏でレッスンする時間やSNSをする時間も含めてです。ラフ×ラフでの活動が主軸になっていますし、どんな行動をするときも「アイドルだからこうしよう」というのが常に念頭にあります。実は大学院に行って研究しようと思ったのも、アイドルとしての経験が後押ししています。アイドルになってなかったら大学院に行く選択肢はなかったです。

 じゃあ、いかなる時でもキャピキャピアイドル100%でいられるかというとそうでもなくて……。主観的には見た目も中身も別人のようなときがあるわけです(笑)。アイドルでいる自分と学生でいる自分、これを切り分けるのがどうもうまくいきません。

 自分を客観的に分析すると、ひとことで言えば「アイデンティティ」形成の中で迷いがあるんだろうなと思います。実際に「アイデンティティで悩んでいるんだよね」っていう悩みを持つ人に私は出会ったことはないんですけど、アイドルだったら割とあり得る悩みなんじゃないかなと思っています。

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 「アイデンティティ」というのは「自分は何者か」という自己認識のことを指していて、よく思春期の時期には「アイデンティティの拡散」(自分が何者かわからなくなる)が起こりやすいとも言われています。私はそれがずっと薄っすら続いているような感覚があります。


■どれが本当の自分? ―理想―

 アイドルとして生きる自分。それは正直いい部分ばかり(理想)を見せています。でもだからといってこれを「裏表がある」って言い方もしたくないんですね。誰しも初対面の人と会う時とか、これから関わっていくであろう大切な人の前ではちょっといい顔しますよね? 嘘をつかない程度に。そんな感覚です。

この心情をうまく捉えてくれている歌詞がラフ×ラフの楽曲にあるので紹介します。

「上手に言えない気持ちがある。それが嘘だと思われたくはない」

(Yondanda/ラフ×ラフ ,作詞作曲:Tamurapan)
ラフ×ラフ「Yondanda」Music Video

 アイドルってずっと笑顔で、夢や希望を与える存在であるから(一般論として)、どうしてもポジティブな側面を表に大きく出すんですよね。もちろんアイドルの涙や悔しさも美しいですが、少なくともアイドル側はみんなにハッピーを届けたいという想いが強いです。ネガティブ感情をなるべく隠したり、あるいはプラスな気持ちを誇張して表現、リアクションしたりするときもあるわけです。

 でもそれを色んな局面で、一対不特定多数の規模感で繰り返していると、「これって本当の自分なのかな」という壁にぶつかります。嬉しいのも楽しいのも本当のこと、嘘をついているわけでもない、何が悪いわけでもない。でもすべてをみせられていない自分のことを好きでいてくれる人がいる。そこに何か負い目を感じてしまうのか。能力や経験は本当の自分が評価されるけれど、性格や態度など演出できる部分は、そのキャラクター性が評価されやすい、この構造が本当の自分と理想を混在させるのか。このへんまだうまく言語化できないけれど、常にもやもやした何かが私の中にいます。

■アイドルでいる時の自分は強い

 アイドルでいる自分、それは偽りなのかと問い続けながらも、私はアイドルでいる自分がとても好きです。理由はなりたい自分になれるからです。

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 私を知っている人は、アイドル吉村萌南に対してどういう印象を持ってくれているでしょうか。プロデューサーの佐久間さんからは「吉村は度胸がすごい」と言ってもらうことがよくあります。素直に褒め言葉と捉えたいんですが実際には私の自由奔放な言動への皮肉も含まれている感じがします(笑)。ラフ×ラフに入る前まではどちらかというと他人任せで思ったことも口には出さない性格だったので、この変わりようには自分でもびっくりしています。

 けれど単純に消極的な自分から積極的な自分にシフトできたとは言い切れないなと思っています。これが面白いところで学生として生きる自分はいまだに引っ込み思案で大人しいです。この前も授業の発表で声が小さすぎて注意されたほどです。これはスカしてかっこつけているとかではなく、本当に緊張するし声が出ないんです。メンバーにはうるさいと言われる時もあるくらいなので物理的には声が出るはずなのに縮こまってしまう自分がいます。そんなの甘えだといったらそうなのかもしれないけど、明らかに学生でいる時の自分はアイドルでいる時の自分とは違くて自信がないです。

 だからアイドルでいられる時間は、本当の自分なのかという懐疑心を抱きながらも、理想の自分でいられるのが私の中での救いでもあります。自分でも不可解なパラドックス的な心理が存在しています。学生の自分だったら躊躇してしまうこともアイドルというキャラクターがのっかることで強く堂々としていられる、それに笑ってくれて、ツッコんでくれて、認めてくれる人がいる。そんな環境が有難いですし、実は自分にはあっているんじゃないかなと思ったりもします。