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【マンスリーアイドルコラム No.024】岡田彩夢 #1「8年所属したグループを、卒業して初めて客席で見た話。」(3月金曜担当・全4回)

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毎月さまざまなアイドルがフリーダムに執筆する、ガラスガールNEXT「マンスリーアイドルコラム」。本日より新たに「3月金曜」の枠を担当するのは、岡田彩夢

彼女のコラムは本日7日、14日、21日、28日と、全4回配信。

来週以降のコラムはぜひ、ガラスガールNEXTへご加入を。

自分はどう感じるのか、不安に思っていた

 2024年7月。8年間所属していた虹のコンキスタドールというグループを卒業した。卒業を前にして、ガラスガールからインタビューを受けた際、私はこう言っていた。

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虹コン・岡田彩夢は卒業前に何を思う?「卒業発表のギリギリのタイミングで、手紙に『アイドルを続ける』と書き足しました」
「虹コンを一番好きなグループだと言える」
「いいでしょう、虹コン!」
「でも今後、もしかしたら一度虹コンを『見れない』という可能性もあるかなと思うんです。自分の歌割りとかポジションに別のメンバーがいてって……」
「だけど私は今、虹コンという存在を心から愛せているので。心置きなく、ちゃんと卒業して。また卒業メンバーとしてライブを見に行ける自分になりたいなと思います」

 それから7か月。先輩である鶴見萌と中村朱里。そして同期の清水理子が卒業するライブが日比谷野外大音楽堂で行なわれるとのことで、ついに「卒業メンバーとしてライブを見に行ける自分」になることにした。

 2日間の開催だったので、卒業という重大な意味を持つ2日目さえ見に行ければ本当のところは良かった。けれど、卒業ライブという意味を持たない、自分のいない虹コンのライブをフラットに見てみたいという欲に駆られ、1日目も行くことにしたのだった。

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 2月8日。開場し、ファンが談笑をしたりステージの写真を撮ったりしている。関係者列に並びながら見る光景は、虹コンメンバーの缶バッジや法被を身にまとい、推しの色に染まった人たちだった。

 いつもみんなこんな風に開演を待っていたのか、寒かったり暑かったり過酷な環境のなか待ってくれていたのか。事実として理解していながらも、実際に目の当たりにすると大変な熱量や期待、愛情の上で成り立っていることを痛いほど自覚した。

 私が抱えていたファンへの感謝は、全然足りなかったのではないかとさえ思うほどに。

 寒空の下、歯をガタガタ震わせながら待つ。聞くだけで心臓がバクバクするほど脳に刻み込まれたOvertureが響き、ステージにメンバーが上がっていく。

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 それは、自分がいつもステージの上で見ていた光景だった。違和感がないのだ。それはそうだ。ライブをしているときは客席と周囲のメンバーしか見ていないのだから、客席から見たとて自分自身が見えないのは景色としては当たり前のものだった。虹コンとしてライブをしていたとき何度も思った「自分がいない虹コンを客観的に見てみたい」という欲望が叶ったというのに、何も感じない。

 しかし、在籍時に「自分たちはどれほどのパフォーマンスをできているのだろう」「ファンにはどんな風に私たちが見えているのだろう」という常々感じていた強迫観念にも似たそれは、客席から見ることで、五感のすべてで浴びることができた。私は初めて、虹のコンキスタドールのライブを見たのだ。

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 普段のリハーサルで、時間をかけて、メモを取って確認していたようなことは一瞬で過ぎ去り、「努力とはこんなにもあっけなくて気づきにくいものなのか」と思った。これは演者だからこそ感じる悔しさなのだろうか。

 そんな風に、素直に楽しむというよりは一つひとつを審議するような目線でライブを見続けた。それしかできなかったのだ。あまりにも私は、長いこと虹コンに期待をして、長いこと虹コンの一部であったのだから。

 これから書きたいことを伝えるために前置きとして説明すると、虹のコンキスタドールというグループはメンバーの入れ替わりが激しいグループだ。

 初期のコンセプトは「毎日が文化祭」であり、まさに入学や卒業がある学校のようだといえば伝わるだろうか。つまり、2016年の虹コンと、2020年の虹コンと、2025年の虹コンはまったく違うのだ。それはグループとしての成長でもあり、痛みでもあった。

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 恐らく、公には言ってこなかったことだが、私は2016年に虹コンの予科生(研究生や練習生のようなもの)として加入したときの「虹のコンキスタドール」に固執している。

 ネットミームを当然のように話していたり、ランダムグッズを開封しながら絶叫していたりする、ホンモノのオタクばかりの変なグループ。そんな、オタクで、あまり学校に馴染めなくて、生きづらそうで、自分がわからなくて、一生懸命もがいている彼女たちが愛おしかった。

 そんな変な子たちは、ステージに上がると何よりも魅力的に輝いて、華があって、バラバラの個性がひとつの味になる。それは8年経った今でも私の中に「虹のコンキスタドール」として焼き付いてやまない。この人たちと一緒になりたい、と心からの憧れがあった。

 しかし、メンバーは入れ替わり、グループは変わり続けていく。愛おしく、憧れてやまない虹コンに戻ることは二度とない。

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 冒頭でも書いたように、卒業メンバーとして虹コンのライブを見たときに自分はどう感じるのか、不安に思っていた。てっきり、自分の居場所に他のメンバーが居て複雑だとか、そんなわがままな感情を抱くだろうと思っていた。

 結果、私を襲ったものは「憧れていたあの時の虹コンはもういないんだ」という、あまりにも自分勝手で、あまりにも時差のあるショックだったのだ。

 これは、これまで繋いできたすべてのメンバーにも、今頑張っているメンバーにも、今応援しているファンにも、そして頑張ってきた自分にすらも失礼だ。しかし、正直になろうとするとどうしてもこの感情になってしまうのだった。

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 その一方で、メンバーやファンとがむしゃらに駆け抜けてきた8年間の日々も間違いなく愛おしい。ネガティブなことを語ってしまったが、これに嘘は一つだってない。「ずっと一緒に居ようね、老人ホーム建ててみんなで住もうね」なんてお伽話を、何度も何度も祈るように話すメンバーたちだった。愛おしくないはずがない。とても楽しい日々だった。

 家族よりも一緒に居る仲間たちだった。ただの仕事仲間にも、友達にも当てはめられない特別なものだった。喧嘩ができない臆病な子たちだった。ライブでミスをしたら楽屋で反省会をする子たちだった。

 私が見てきた日々は、もう過ぎ去って存在しない。これからの虹のコンキスタドールは、きっとまた別の存在として確立し輝いていく。

 私はそれを身近で観測することはないけれど、今は今で正解なのだ、どんな時代にも間違いはなかったのだ。

 卒業メンバーとしてライブを見に行った自分は、遠い場所から今を見守り、過去を懐かしみ宝箱に入れようと心に決めた。

 感情は曖昧のまま大事にしたって良い。けれど、虹コンで居た日々を後悔することは絶対にない。ありえないくらいに眩しい思い出で、これからもちゃんと私の永遠なのだから。

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PROFILE

岡田彩夢

おかだ・あやめ
2000年8月8日生まれ、熊本県出身。
身長148cm、血液型B型。
2024年8月に虹のコンキスタドールを卒業し、現在はソロアイドルとして活動中。
イラストレーター、シナリオライター、作詞等の活動も行なっている。
大学院で近代文学を研究中。
趣味はお絵描き、読書(近代文学)など。
最新シングル『ねこねこ☆ねっとわーく (feat. 藤咲彩音 & MEW)』が配信中。
3月15日(土)、東京・恵比寿CreAto「#DSPM踊り場」に出演予定。

文・写真/岡田彩夢