ハロプロとのコラボでマーケティング成功!!「きらレボ世代」は演者にも客席にも
アイドルファン歴約30年、アイドルやそのファンダムを対象に研究する慶應義塾大学大学院博士課程在籍の研究者、上岡磨奈さんは『きら☆レボ』が流行った当時の時代背景をこう分析する。
「主人公の少女が何らかの理由によってアイドルとして活躍するというアニメは既に『魔法の天使クリィミーマミ』や『アイドル伝説えり子』などがあるので、きらレボだけが特殊なコンテンツというわけではないんですね。アイドルが主演声優を務め、楽曲を歌うことも前出の2作品の他に『アイドル天使ようこそようこ』などいくつも例があります。
ただ、放送開始前に同じハロー!プロジェクト所属のアイドルユニットであるミニモニ。、およびその母体のモーニング娘。が女児層にも人気を得て、メンバーが『おはスタ』(テレビ東京系列)など子どもたちをターゲットにした番組や、学年誌・マンガ雑誌にも出演していました」
それまでのアイドルアニメと『きら☆レボ』の違いは、すでにハロプロアイドルが子どもたちの人気者になっていたこと。『きら☆レボ』とともに、アイドルの世界をより臨場感を持って見せてくれたのかもしれない。
「また、同じタイミングでハロモニ。こと『ハロー!モーニング。』(テレビ東京の冠番組)で、久住さんのオーディション模様に密着取材していた時期もありました。その前触れがあり、久住さん個人のアイドル性とバックグラウンドもあって、アイドルを目指すシンデレラストーリーを描いたこのアニメがマッチしたともいえます。今ほどネットのコンテンツも多様化していないので、アニメを見ていた子ども達の絶対数も多かったことが推測できるのではないしょうか」
2005年に13歳でモーニング娘。に単独加入し、新潟県から上京してたちまちトップアイドルになった久住。デビュー2年目に『きらレボ』でアニメの主役となったことで、久住のキャリアとアニメの中の月島きらりのストーリーが視聴者にはぴったりリンクして映る効果もあったのではないだろうか。
「ハロー!プロジェクトやその関連グループとテレ東系列の子ども向けアニメの関わりはこの後も続き、『しゅごキャラ!』でもハロプロユニットのBuono!、しゅごキャラエッグ!、ガーディアンズ4が主題歌などを担当しました。キャナァーリ倶楽部の小川真奈さんが主人公を務めた『極上!!めちゃモテ委員長』のヒットも印象的です。
今ほどYouTubeもSNSもシェアを獲得していませんから、これらの作品からアイドルに親しんだ子どもたちがあの時代にたくさんいたわけです。もちろんアイドルやアニメ、テレビ、マンガ、雑誌、音楽など様々なメディアやコンテンツが携わった、ビジネス上の戦略などがあっての結果でもあるでしょうが、『きらレボ世代』ともいうべき方たちが成長して、パフォーマーとしてステージに立ち、注目される年齢になったことでその影響力を再び感じるのが2020年代の「今」なのだと思います。『きらレボ』放送の同時期に『ちゃお』の専属モデルオーディションである『ちゃおガールオーディション』が始まる(2007年)など芸能界に憧れる、また芸能界を目指す子どもたちが早くからチャレンジできる環境が身近に用意されていったことも追い風になったでしょう」(上岡さん)
当時ターゲットになった世代の子どもたちに、初めてアイドルの世界を見せてくれた存在のひとつだったのは間違いない。
「プリキュアシリーズ(テレビ朝日系列)などの長寿コンテンツもありますし、アイドルやダンスボーカルユニットを起用したタイトルとしては『プリティーリズム』シリーズもあります。なので『きらレボ』だけが圧倒的に子どもたちの心をとらえた、とまではいえませんが、往年のアイドルアニメのフォーマットや当時のトップアイドルとのメディアミックスを最大限に活かした作品として、近年最も印象的な作品の一つに感じています。今のアイドル現場では演者だけでなく、客席側にも“きらレボ世代”が増えてきました。彼ら彼女たちも成長して現場で盛り上がっています」(上岡さん)
きらりん☆レボリューション。
それは、以降の「アイドルアニメ」の基盤のひとつとなっただけでなく、「アニメ(二次元)とアイドル(三次元)」という、ふたつの世界をつなげた作品として、今も多くの少女たちに影響力を残している“名作”なのだ。
amorecarina(アモレカリーナ)→ラストアイドル→高嶺のなでしこと小学生時代からアイドルを続けてきた松本ももなは、アイドルを目指したきっかけをこう振り返った。
「モデルをしていた小学生雑誌でアイドルオーディションの募集があって、私も勧められたのですが、『こんな人見知りな私でも目指してもいいのかな?』と思ったときに、きらりん☆レボリューションを思い出しました。『もしかしたら私もきらきらしたアイドルになって、ステージに立って歌って踊って応援してくれるファンの方に笑顔や元気を与えられる存在になれるのかな? なれるならやってみたい!』と思いました」
放送開始から15周年だった2021年の4月には、ツイッターが「きらりんレボリューション15周年」のハッシュタグで盛り上がった。『きらレボ』で初めてキラキラのアイドルの世界に接し、夢をもらった少女たちにより、アイドル文化は再生産されていく。
取材・文/大宮高史 イラスト/あすま (@asu5m843B)