アニメ化になる時は絶対私を声優として推薦してくださいね!
「あのヲタ」の好きなシーンについても聞いていきましょう。
- 篠崎
心が折れる音とサイリウムが折れる音が一緒だと主人公が気付いて、会場にサイリウムの光がワッと灯るシーン(「あのヲタ」P.30)。このカットがとても素敵。
- 田辺
ここ描くのが大変だったんだよね。
- 篠崎
心を掴まれたシーンです。確かに「サイリウムは折れないと光んないよなあ」って思いました。自分が落ち込んだりしたときに、このシーンを思い出しちゃうんだろうなって思うくらい印象的なシーン。
- 田辺
いやあ、描いてよかったなあ。
- 篠崎
このシーンはすごくきれい。アイドルを推すオタクを中心に描いた話だから、アイドルに集中線が向かっているけれど、アイドルの顔は見えていなくてオタクが光っている。
- 田辺
そう! そうなんだよ! 推せるなあ、篠崎こころは推せるよ、やっぱ!
「折れてから光るでしょサイリウムって」このセリフ、ぜひ、こころさんにルミノとして読んでいただきたいですね。
- 篠崎
私、声優さんとかじゃないので。声優さんの勉強しておきますので、もしアニメ化になる時は絶対私を推薦してくださいね!
(会場拍手)
- 田辺
やった! 誰かアニメ化してくれないかなあ。
では、最後のトークテーマは「心が折れた瞬間」です。田辺先生は結構折れてきましたよね?
- 田辺
「あのヲタ」のあとがきにも書きましたけど。バキバキに折れてこのマンガができている。自分のことを描いたんじゃないかって感じです。
この作品は、最初にアイデアを聞いてから数年後に、講談社の四季賞に入賞していて(タイトルは『閃光ボーイズ』)。先生は集英社の仕事をしていて、ライバルともいえる会社の賞に送るのはあまり例がないですから。しかも四季賞は新人の方がメイン。そこにプロとしてデビューしている人が送るという。
- 田辺
リスクはありました。でも、どこに作品を持って行っても、「アイドルオタクのマンガなんて……」って言われちゃって。だったら引退覚悟で賞に出そうと。家に引きこもって、体調悪くなって救急に運ばれながらも描いて。一番イヤだったのは、「最終選考」とかでちょっと名前が出ること。恥ずかしいし、賞をとるか落とすかしてほしいと思っていたので、賞をとれてよかった。
でも、そこからも大変だったんですよね。
- 田辺
そう、賞はとったけど、どこに持って行っても「連載は無理です」って言われて。何回か心を折られながらも、クラウドファンディングがきっかけで電子書籍での連載、書籍化ができた。心が折れた末、光って何とか持ち直したっていう。
今日この日のために歩んできたロードでしたね。
- 田辺
でも、今日のことがあるとわかっていたら気が緩んでここまで頑張れなかったかも(笑)。
篠崎さんは心が折れたことはありますか?
- 篠崎
さきほどAKB48さんが好きって話したんですけど、AKB48の二期生のオーディションを受けたことがあって。
書類第二審査で落ちて私のアイドルとしての道はもう難しいんだと思って。その後は、AKBさんの劇場が見える目の前のメイドカフェで働いていて、劇場入りするメンバーをなんとか見られたらというオタク心でした。そこからメイドカフェのアイドルグループ(=プティパ)を作って、トントントンと今になって。オーディションに落ちて折れたから光ったのかも。
- 田辺
AKBにいたかもしれないと思うとすごいなあ。
ちなみに、最近だと「アイドルの恋愛」や「アイドルの結婚」の話題が多いんですが、おふたりはどう考えてますか? 忖度とか建前もなしで。田辺さん。
- 田辺
うーん……。推しの幸せが僕の幸せ。
(会場失笑)
会場も失笑ですよ。あいつ今嘘ついたって(笑)。
- 篠崎
会場が笑ってるってことは、みんなも建前と思っているということ?
少なからず思っているんじゃないですか?
- 篠崎
最近の風潮として、「推しの幸せが自分の幸せ」と言えるのはいいねって私もそう思います。
- 田辺
だよね!(ニッコリ)
年齢がいくつくらいまでいったら「許す」という風潮もありますよね?
- 篠崎
でも、「許す」って「誰が許してんのよ!」って話じゃないですか(笑)。「俺が許したからお前は結婚していいぞ」ってことですか?
田辺先生は、正直どう思いますか?
- 田辺
「俺の頬を殴ってから結婚しろ!」と思います。
(会場から「気持ち悪い」のドン引き声)
今、完全に「気持ち悪い」って聞こえましたよ。
- 田辺
誰だ! ……推しの幸せと言っても、やっぱり複雑は複雑ですよ。
- 篠崎
あはは。私も実はちょっとモヤっとする(笑)。
でも、「一番イヤなのはいなくなることだから」「だから辛いけど応援するよ」みたいな。そうやって自分を説得する人たちも多いと思いますよ。
- 田辺
いっそのこといなくなってくれという気持ちもなくはない……。
- 篠崎
結構ガチ恋オタク派なんですね。
- 田辺
こればっかりは難しいですよ……。
この話はあれですね。長くなるのでまた次回、ロフトプラスワンあたりでやることがあったら話しましょう(笑)。