「とりあえず来てみなよ」って、雪が降る北海道に
そうして加入した前のグループは、少しの活動期間で卒業。なかなかうまくいかず、もどかしい日々ですね。
- 阿部
うーん。その頃、保育の学校に通ってたので、実習が多くて忙しくなってきていて。あと、ゆくゆくの進路や将来を考えたときに……なんにも包み隠さず言うと「アイドルをするなら、もっと活動に集中できるところに行きたい」って思ってしまって。それで前のグループを卒業しました。
それでアイドルではなくなった期間に、BiSHさんの『Nothing.』のMVを見たんです。それで私、涙が止まらなくなっちゃって。
幕張メッセでのライブに至るドキュメンタリー映像で構成されたMVですよね。
- 阿部
はい。MVの最後に、メンバーのみなさんと渡辺さん(淳之介。WACK代表兼プロデューサー)が「お疲れ様!」って抱き合うカットがあるんですけど、こうやって抱き合って喜べるような関係性って本当に羨ましいなと思って。
グループ全体でひとつの喜びを分かち合うような感じに私もなりたい、と。
- 阿部
と思って、WACKのオーディションを受け始めました。
え!
- 阿部
あんまり言ってこなかったですけど、めちゃめちゃ受けてました。ちょうどWACKさんが一年間で何度もオーディションをしている年だったので、6回くらい。
BiSHが好きなのは知っていましたが、オーディションも受けていたとは知りませんでした。
- 阿部
でもまぁ実らなかったので。で、短大の友達はどんどん就職が決まっていって、「まずい、まずい……」ってなってるときに、今度は今のプロデューサーのついまさん(松井広大)から「北海道でグループを作るんだけど、どう?」って声をかけていただいて。それで今のタイトル未定に入った……という感じです。
加入までの流れはよくわかりました。でも、阿部さんはそれまで埼玉に住んでいるわけじゃないですか。いきなり北海道と言われても戸惑いません?
- 阿部
いや。声をかけていただいて、初めてお会いしたときには「自分が行くべきはここなんだ」って、スポッとハマッたような感覚になってました。その場で『いつか』の仮歌を聴かせてもらいながら、コンセプトとかの説明をしてもらったんですけど、それが腑に落ちたというか。そのあとすぐ、家族や友達に「こういう話をもらって、北海道に行くかもしれない」って話をしてたと思います。
たしかに『いつか』はタイトル未定の世界観を象徴するような、優しさにあふれた名曲ですけど、それにしてもすごいスピード感です。
- 阿部
でも、その頃はまだWACKさんのオーディションがひとつ残っていて。「最後にそれが駄目だったら北海道に行こう」って決めてたので、返事はその場でしなかったんです。だけど、ついまさんは「とりあえず来てみなよ」って、雪が降る北海道に呼んでくれて。めちゃくちゃ寒いし、雪で前は見えないけど、そこで「北海道、いいな」って。
その初めての北海道で思ったんです。「最後にもう一回オーディションを受けようとしてるけど、それに落ちてから北海道に来たら『本当に入りたかったのはここじゃないしな』って、言い訳しちゃう日が来るかもしれない」って。それは失礼だし、自分自身にも絶対よくない。それで結局オーディションはやめて、タイトル未定に入りました。
大きな覚悟を決めてタイトル未定に加入したわけですね。どうですか? 阿部さんが感じた「自分が行くべきはここなんだ」というフィーリングは、正しかったですか?
- 阿部
やっとそう言える感じになったかもしれないです。コロナ禍でのデビューだったのでデビューがネットライブでしたし、最初はメンバー4人に対してお客さん6人とかで「まずいよ」って思いましたし。
でも今はこうして、たとえばTIFが終わったあとに「おめでとう」ってみんなで喜び合えるのがすごく楽しいです。あの頃羨ましかった『Nothing.』みたいになって、「わー、これだー……!」って嬉しかったのを思い出しました(笑)。