無双の理由② 関西弁×ヤンキーキャラを作り出したセルフプロデュース力
2019年頃から彼女がバラエティタレントとしてブレイクしたきっかけは、コテコテの関西弁と毒舌でまくしたてるヤンキーキャラという、いかにも関西そしてBiS出身らしい役回りのため。
ところがこのキャラも、「関西弁のヤンキーっぽい人、テレビにおらへんなぁと思って無理にやってる」と『ダウンタウンなう』(2019年11月29日)で明かし、中学時代の眼鏡をかけた真面目そうな写真を公開したこともある。意図的なキャラ作りも辞さずあえて自分と違うキャラクターになりきることもできてしまう上、素のウイカ本人とのギャップも視聴者に伝わって二度おいしい状態になった。
さらに、このキャラクターは「“関西弁”、“ヤンキー”、“かきあげ前髪”みたいに3つのワードで覚えてもらえるように考えていた」と話す(『あちこちオードリー』2020年7月7日)。同じようにオードリーの春日俊彰なら「ピンクのベスト」「1:9分け」「トゥース」で説明できてしまうというこの理論でオードリーの両人を唸らせた。
他にもマツコ・デラックスの『アウト×デラックス』では堂々とスッピン顔を披露してかえって視聴者の好感を誘い、『踊る!さんま御殿』では明石家さんまに既婚者だったことを突っ込まれても「タイミングを失って」とあっけらかんと答えた。アイドル出身者ならネガティブになりかねないネタも“それすらもキャラ”と成立させていく。自分のキャラをしっかりと作り上げ、それを高いクォリティで日せることができるのだ。
「しかも、大物タレント相手にも動じず、戦略的につめ跡を残していく突進力。これがすごい。いろいろな芸人と組んでも活きる才能ですし、番組そのものを盛り上げることにもつながっていると思います」と平賀さんは評する。
またそうした振る舞いも、自分だけが売れればいいというのではなくあくまで共演者やグループのためにやっていることのようだ。
「彼女の気質的に、自分が笑いを取りに行くのもあえてやっているという自覚はなく、グループ・チーム全体が盛り上がること自体にモチベーションが上がるタイプなのではないかなと思います」(平賀さん)確かにその視点で見てみると、売れるための3つのキーワード理論もオードリー春日をしっかり立てている。共演者へのフォローを欠かさないのもBiSやBILLIE IDLE ®での経験が活きているのではないだろうか。
昨年2月22日にリリースされたウイカのソロデビューシングルのタイトルは『カメレオン』。シンガーソングライターの阿部真央との綿密な話し合いを経て生まれた私小説的な1作だが、その場に応じてキャラを演じ分けてきた彼女らしいタイトルでもある。