最近、元48グループメンバーがライブアイドルになるケースが急増しているが、その中で特別な位置にいるのが元AKB48チーム8の佐藤栞。彼女はプロデューサーとして自らもメンバーである“刹那的アナスタシア”と、もう1つ全く別のカラーの“かすみ草とステラ”、2つのグループを昨年スタートさせ、コロナ禍の混沌としたライブアイドルシーンで着実に成果を上げつつあるのだ。そんな彼女に聞く、プレイングプロデューサーとしての苦労とアイドル哲学。
元々はプロデューサー専任の予定だったんです
AKB48を卒業されてから、2つのグループのプロデュースを始めて、自らも再びステージに立つようになるまでは、どういう経緯があったんでしょうか?
- 佐藤栞
2019年の6月の卒業公演をさせて頂いて、その後は話すことが好きなのでトークイベントとかを中心に活動してたんですけど、もともとアイドルが好きだし、自分の中でこういうグループがあったらいいんじゃないかな〜ってイメージができ始めていて。ちょうどそのタイミングにプロデュースのお話を頂いたので、受けさせて頂いてオーディションを開催して今に至る感じです。
ただ最初にオーデシションを始めたときは、1グループ想定で、自分がメンバーをやるつもりも全くなくてプロデュースだけの予定だったんですよ。それが実際にオーディションを進めると良い子が多くて選びきれずに2グループ作ることになって、だったら片方は私が入った方が立ち上げの時の話題にもなるか……って話になって今の形になったんですよね。だから「もう1回自分もステージに立ちたい!」と強く望んだわけではなく、と言うと怒られるかもしれないですけど(笑)。自分が選んだ子たちが活動をしていく上で、ベストと思える方法を選んだという感じです。
2つのグループのコンセプトは、どういう形で固まっていった感じでしょうか?
- 佐藤栞
私が入ることになった“刹那的アナスタシア”(以下ツナスタ)の方は、先にデビューもしますし、最初の段階である程度パフォーマンスのクオリティーがあって、お客さんに確実に刺さる、とにかくライブに強いグループにしたいと思いました。だから曲調も強めで、いわゆる“沸ける”曲中心に、振り付けも初見で振りコピができる感じにしています。逆にもう1つの“かすみ草とステラ”(以下カステラ)の方は、フレッシュで未完成だけど成長を見届けたくなるような存在、そしてフワッと世界観や物語を伝えるような感じを目指していて。最初の4曲は詞がストーリーになっていて繋がったりしているんです。衣装もツナスタの最初の衣装は、夜に輝く星の雰囲気で深い青や黒をベースにした感じで、カステラの方は柔らかい色を使って、制服っぽいデザインにしましたね。
- 佐藤栞
面白いのが、メンバーのキャラクターも2つのグループで全然違うんですよ。カステラの子たちは本当に良い子たちで、手がかからないというか、もう何も言うことがない。反対にツナスタは全員揃って主張が強すぎる(笑)。個性が強くてめちゃめちゃ自分の意見を言う。私もAKB48時代はすごい主張するタイプだったんですけど、それが5人いる感じ! スタッフさんは大変だと思いますよ。ファンの方からも“本当に真逆だよね〜”って言われます。ただ、それは最初にメンバーそれぞれの個性を感じ取って分けたのか、そのグループになったから個々がそういうキャラになって行ったのか分からない。不思議です。
それこそプロデュースの醍醐味って感じですね。でもプレイングプロデューサーという立場は、大変なことも多いんじゃないでしょうか?
- 佐藤栞
やっぱりメンバーとスタッフの間ですれ違いがあったときに、両方の言い分が分かっちゃうんですよね。だから板挟みじゃないけど、「どう言っていいか分からないな……」ってときはあります。例えばスケジュールの面で、忙しい時期にさらに別の案件が入ってきたりとか。終わりだと思ってたことがまた追加で入ってきたりとか。メンバーからすると「ただでさえもうパンパンなのに!」「このタイミングに何で!?」って気持ちになっちゃう。でもスタッフさんからすると、やっぱり今後につながる大事な案件だからやらなきゃいけなかったり……。本当に両方の気持ちが分かるんですよ。
プロデューサーでありながら、ある意味中間管理職的な立場になっちゃうというか(笑)。
- 佐藤栞
そうですね〜(苦笑)。あとはやっぱり時間ですね。両方のグループのデビュー前の立ち上げの段階では、本当に全てにおいてこと細かにスタッフさんと話し合いながら決めていった感じなんですけど、ツナスタがデビューしちゃうともうメンバーとしてもやることが一気に増えちゃってパンクしそうになったので、途中からいろんなスタッフさんに分担してもらって、仕事量を減らしてもらいました。カステラも、時間に余裕があったり同じ対バンに出たときはなるべくライブを見て、見れないときも動画を送ってもらったりしてますけど。本来プロデューサーとしてやりたかったことが、100%完全にはできてないかもしれない。