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ばってん少女隊、夏を駆け抜けた名曲『虹ノ湊』が有線で話題に なぜ今の時代に有線で“ばっしょー”がウケ続けている?

BATTEN_MAIN

2022年、夏を駆け抜けたアイドル名曲ソング、ばってん少女隊(ばっしょー)の新曲『虹ノ湊』(こうのみなと)をご存知だろうか。キラキラを詰め込んだ爽快なエレクトロポップは夏のアンセムとなった。

ばってん少女隊『虹ノ湊』

曲名や、ばってん少女隊を知らなくても、カフェやコンビニやCDショップで、このメロディーに聞き覚えのあるリスナーはいないだろうか。6月29日のリリース以後、有線でロングヒットを続けてブレイクし、じわじわと支持を獲得してきた。

なぜ今の時代に有線で刺さったのだろうか。

『虹ノ湊』の作曲は福岡県宗像市出身のラッパー・Rin音による。リリース同日に公開されたMVでは陽光きらめく浜辺や港をバックに、涼しげな青い衣装の彼女たちが踊る。随所で波の音をメロディーラインに採用し、アイドルソング王道のキラキラ感も打ち出した。MVの撮影場所はタイトルの由来にもなった宗像市の神湊(こうのみなと)港や奄美大島で、映像の美しさとサウンドもあいまって夏休みの思い出がよみがえってくるかのようだ。振付も福岡のダンサー・yurinasiaが主宰するdance spot『jABBKLAB』からコレオグラファーのcocoroyenが担当し、九州のクリエイターを積極的に起用してできあがった。

この曲、USENの週刊USEN HIT JPOPランキングでは8月10日付(7月29日~8月4日集計)でも10位をキープし、全国有線音楽放送協会が集計するリクエストランキングでも8月12日付チャートで自己最高の9位を確保。7月下旬から5週連続でリクエストランキングベスト20圏内に入り続けていた。6月末にリリースされた曲が、長くヒット。しかも有線で、である。

昨今のアイドルソングといえば、TikTokなどSNSでのキャッチーな動画でバズりを狙うことがトレンド。なぜ今、有線でのブームがばってん少女隊に発生したのか。

アイドルオタク“以外”に刺さった?

「ばってん少女隊×有線」

それは、2020年リリースの『OiSa』(作曲はバンド『ASPARAGUS』の渡邊忍)という曲が有線をきっかけにブレイクしたことに始まる。博多祇園山笠の掛け声を取り入れ、エレクトロなのにオリエンタルで土着的な曲に仕上がった。

ばってん少女隊『OiSa』

独自のレーベルのBATTEN Recordsを立ち上げ、移籍したこの年。いきなり全国的な新型コロナ緊急事態宣言に見舞われてしまったが、レーベル移籍後初のアルバム『ふぁん』収録のこの曲にスポットが当たる。繰り返される祇園山笠の「オイサ!」の中毒性がリスナーの心をつかみ、リリースから半年以上が経過した2021年4月には、有線のリクエスト(問い合わせ)ランキングで1位を獲得するに至る。この年の年間のUSEN HIT J-POPランキングでも13位を記録した。

そもそもなぜ、『OiSa』が有線でこれほどのロングヒットになったのか。「有線はアイドルファンだけではない、老若男女が聴くサービスですよね。福岡だけでなく全国どこでも曲がかかります。そこでアイドルファン以外のリスナーに『何この曲?』と思ってもらえるキャッチーさがあったと考えられます」と分析するのは、自身もレーベルを持つライターの岡島紳士氏である。

「ふらりと行った場所でたまたまかかっていた曲が聴ける有線は、クラブやアイドルフェス、SNSとは全く性質が異なります。アイドルオタクではない、ライトな音楽リスナーが興味を持ち始め、じわじわチャートを上げてきたのが『OiSa』ではないでしょうか」(岡島氏)

『OiSa』が民謡のリズムとサウンドを取り入れてアイドルソングらしからぬ構成になったことも、かえって一般の有線リスナーにインパクトを残せてよかったのではないかと岡島氏は考える。キャッチーさは、有線を介してアイドルオタク層以外にも刺さり、ロングヒットになったというわけだ。スタンダードなアイドルソングのようにライブ映えする要素は少ないにしても、初めて聴くリスナーに強い印象を残す。『虹ノ湊』もその系譜に位置付けられるようで、実際に8月の「有線J-POP問い合わせランキング」でこの曲は1位につけており、グループや曲を知らないリスナーの耳目を引いている。