【こ】
恋するフォーチュンクッキー(AKB48)
選抜総選挙で指原莉乃が初めて第1位に輝いた2013年。老若男女が受け入れられるどこか懐かしい曲調で、底抜けに明るいこの曲のMVは、約4,000人という数のエキストラを交えて撮影。街を上げてのパレードのような雰囲気は、当時のAKB48だからこそ成立させられた画。
幼稚園児や高校生、スーパーで買い物袋を下げたお母さん。渋谷のスクランブル交差点にいる外国人、どこにでもいそうなタクシー運転手、プロレスラー・小橋健太……。AKB48メンバーに限らずあらゆる人が“恋チュンダンス”を踊る。グループの存在自体が社会現象で、自らがスター集団であることを証明するような映像に見えるかもしれないが、それぞれのエキストラが照れながら、または堂々とした顔をしながら、「一生懸命、楽しそうに」踊っていることにこの曲、このMVの魅力がある気がする。
Compression: Free(MIGMA SHELTER)
2017年末リリースのミニアルバム『ORBIT EP』に収録されていたのが、この『Compression: Free』だ。サイケデリックトランスを標榜していたMIGMA SHELTER(ミシェル)がエレクトリックボディミュージックを思わせる硬質なビートにハードロックギターが混ざる、当時の彼女たちのディスコグラフィでは異色の1曲として注目された。ラストのサビの最後の最後の〈Compression Compression… Compression: Free〉のリズムに合わせてフロアのオタクの多くが最前中央に圧縮するのがライブの定番のムーブになっていた。
MVでは、暗いオフィスにひとり、スーツに黒ぶちメガネ姿でオフィスで残業していたミミミユがうっかり居眠りをした刹那、(おそらく)その夢の世界にステージ衣装を身にまとったミシェルメンバーがに登場。この曲に合わせてオフィス狭しと踊りまくる上に、勝手に適当なところに電話をかけるわ、資料をそこらへんにバラまくわと大暴れする。そんなに会社員生活って大変? そんなにCompression=圧搾・圧迫されていて、そこからFreeになりたいの?
ごめんね ずっと…(西野七瀬・乃木坂46)
『命は美しい』に収録された、西野七瀬のソロ曲。天才映像作家・山戸結希の監督作品だ。
画面は2つに分けられており、片方は乃木坂46に入ってアイドルとして輝く西野七瀬。もう片方は、アイドルにならずに地元で看護師になり、普通の生活、普通の恋愛を経験して生きる“もうひとつの西野七瀬”が描かれている。
もうひとつの世界線で西野七瀬は、圧倒的な彼女感でカメラに微笑むのだ。
これは、フィクションの画角。しかし、彼女の眼差しと、心のヒダに響いてくる切ない声に胸を突かれてしまう。
それにしても、幼少時代の西野の写真や映像が何度も映し出されるのだが、親御さんの愛情に包まれた画角、目線にグッとくる。「あぁ、素敵な家庭で育ったのだな」と思わされる。そんな部分も見どころ。
現在YouTubeではshort ver.しか見ることはできないが、ぜひDVDでフルバージョンを見ていただきたい。最後の彼女のセリフをぜひ聞いてほしい。
この恋はトランジット(Someday Somewhere)
テレビ朝日系で放送されていた『ラストアイドル』内で行われた「ラストアイドル&4つのユニットが5人のプロデューサーとともにバトル!」という企画。
そこで当時、AKB48選抜総選挙3連覇、HKT48の現役メンバーで=LOVEのプロデューサーでもあった、指原莉乃が、Someday Somewhereを受け持ちプロデュースを行った。それがこの『この恋はトランジット』である。
この曲には、当時の “現役最強アイドル”であった指原莉乃の戦略と感覚が全て詰まっている。縦に6分割されたメンバーをリアルタイムに追う、いわゆる“推しカメラ”の映像を並べる前半と、全体のダンスパート後半。これらのギミックにより、それぞれのメンバーの可愛い顔の一瞬を見逃すことがない。それにしても6人のメンバー全員が可愛いこと可愛いこと。誰かの画角に他のメンバーが映り込むというパターンもあり、見ていてニヤニヤしてしまう。
この曲は、実際、ライブで歌うとめちゃくちゃ盛り上がる。こういう「ライブ映え」も考え抜かれているところが、さすが指原莉乃、と唸ってしまうこと請け合いだ。
ガラスガール編集部が選んだアイドルMV広辞苑「か行」編。いかがでしたか? 今回もあくまでガラスガールのチョイスのため、「あの曲を入れるべき!」と思ってくださった方は、ぜひ「#ガラスガール」で一緒に語り合いましょう。
文/ガラスガール編集部