【き】
君はハニーデュー(日向坂46)
この一年で期待のエース格まで上り詰めた四期生・正源司陽子の初センター楽曲。
視線を下ろしながら自信なさげに学校の廊下を歩く正源司。彼女がふと鏡を見ると、その中の彼女は、とびっきりの笑顔で廊下を走り出し、空色のワンピースをまとった先輩たちとともに先へ先へとどんどん進んでいく。その後ろ姿を追いかけていく中で、彼女自身も気づけば一員となっていく……というストーリー。
激しく揺れるカメラワーク、高速で切り替わるカット、それでも装飾豊かでキラキラと華やかに映る鏡の中の世界。日向坂46のいい意味でのドタバタ感やアグレッシブさがそんな画にもあらわれており、公開直後から好評だったように覚えている。落ちサビ以降、いよいよ集団の先頭として廊下の花道を走り出し、青空抜けのヘリポートで堂々と踊る正源司陽子に、当時のワクワクが集約されているMVだ。
c.a.n.d.y. (BELLRING少女ハート)
『c.a.n.d.y.』は、2014年のBELLRING少女ハート(ベルハー)のシングル『Untouchable EP』収録の1曲。英国のロックバンド・Blurの1997年の大ヒット曲『Song 2』のギターリフを“オマージュ”と呼んでいいのかちょっと不安になるくらい“オマージュ”して、アイドルファンはもちろん、音楽マニアも若干以上にザワつかせた。メンバーを一新した現在のベルハーのライブにおいてもキラーチューンとして大きな人気を集めている。
MV内でベルハーメンバーは、白夜書房『BUBKA』編集部にちん入。本物の同誌編集部員や、白夜社員に扮したエキストラである有志のベルハーファン=ヲタちゃん相手に、自身が歌う〈美味くやればいいんでしょ? イカサマな世界を〉を全否定してみせるかのような大立ち回りを繰り広げる。
キミなんだから(Task have Fun)
代表曲『3WD』よろしく、スタジオでのダンスカットのみで構成された当時のタスクらしさ満点のMV。
常に3分割する3人のカットを次々と入れ替え、3人組をモチーフにした三角形の装飾を転がし散りばめたりと、シンプルながら飽きない画。加えて、『3WD』よりもさらに彼女たち自身のかわいさが前面に押し出されており、実は「これがTask have funです」と紹介するにふさわしい作品なのかもしれない。
MVとは関係ないが、肩関節の体操のようなサビの振り付けは非常にクセになる。一見シュールなのに「かわいい」になるタスク、やはり強い。
キラリ☆(東京女子流)
東京女子流の記念すべきデビュー曲。東京にやってきた少女たちが、それぞれ「旅立つため、羽ばたくための準備」をしているMVだ。
東京の街をキョロキョロと見上げる。自分たちのために作られた楽曲の歌詞を嬉しそうに見る。東京の街角、水たまりを蹴り上げながら踊る。故郷を出るときにもらった友達からの寄せ書きを見つめる。自分たちのデビューを告げる街に張られたポスターを見にいく。
まだ何色にも染まっていない白い空間で「そうさ僕たちはどんな夢も叶えられるさ」と歌いながら踊る。「そうだ。彼女たちはどんな夢も叶えられる」と、飲み込むように頭を縦に振ってしまう。ここまで説得力のあるMVは他にはないだろう。歌詞が胸に突き刺さる。
デビュー当時、センターの新井ひとみは11歳だ。そんな本当に何者でもない少女たちの不安とワクワクと決心が詰まっている。毎日の日常に疲れてしまったら見て欲しい。失われてしまった時間は、ここにある。