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【マンスリーアイドルコラム No.072・初週のみ無料公開】アップアップガールズ(2) 兵頭美波 #1「私には、収集癖がある」(4月火曜担当・全4回)

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通常の「仕事の日」でさえ、4つのバッグを抱えている

私は自分の記憶力には、どうも自信がない。

自分で話しながら、今何を話しているのか忘れてしまうことさえある。
瞬時に物事を記憶するのも苦手で、常に自分の記憶力に対するコンプレックスを抱えている。
だからこそ、物に記憶を結びつけて、手元に置いておくのかもしれない。そうすることで、実際には人よりも濃く、細かく思い出を記憶しているような感覚になる。

昔のことを、まるで昨日のことのように話せるのは、きっと、物という「記憶の定着剤」のおかげなのだろう。
記憶することへの苦手意識が、私を「モノ」と「記憶」を結びつける行動へと駆り立て、結果として、人よりも濃い記憶を刻み込んでいる。そんな矛盾が、私の内側で起きている気がする。

「モノ」がない場合、その時の感情や状況はどれだけ曖昧になってしまうだろうか。

正直、物から連想できない記憶は、ほとんど残っていないかもしれない。物がないと、まるで存在しない記憶を探すような気持ちになる。それほどまでに、私の記憶は、具体的な「モノ」という存在に強く依存しているのだ。

それらは、失われがちな記憶を補強し、私自身のアイデンティティを形成する上で、いかに重要であるかを痛感する。

例えば、アパレル店員時代に、お客様が購入してくださった服と、その時の会話をセットで覚えることができた経験は、私にとって大きな自信になった。
その服という「モノ」が、お客様との一期一会の記憶を鮮明に呼び覚ましてくれたのだ。もし、その服がなかったら、私はそのお客様のことを、いつ、どんな会話をしたのか、思い出せなかったかもしれない。

そんな私は、日常生活においても、常に「モノ」に囲まれている。

とにかく、荷物が多いのだ。

どれくらい多いかというと、決して旅行や遠征の日ではなく、衣装もメイク道具も必要ない、通常の「仕事の日」でさえ、スーツケースにボストンバッグ、ショルダーバッグ、そしてリュックサックという、4つのバッグを抱えているほどだ。

では、その重厚なバッグの中身は、一体どうなっているのだろうか。
今回は毎日背負っているリュックの中身を紹介する。

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リュックの中身

基本的には、大容量アイテムが多い。

ボディクリームをボトルごと、香水を瓶ごと、リップは9本、そして画像にはないが箱ティッシュも持ち歩いている。

その他にもポーチ5つ、巾着二つ、ワイヤレスイヤホン3つ、有線イヤホン1つ、モバイル充電器4つ(一つは撮影に使用しているスマートフォンを充電中)……。
これだけの荷物を持っているのだから、当然、バッグは重い。数字にすると、15kgほどの荷物を持ち運んでいる日もある。あまりの重さに、肩から出血した経験すらある。

そこまでして、なぜ大量の荷物を持ち運ぶのか。
それは、私の「心配性」な性格に起因していると思う。

物が手元にあることで、漠然とした安心感を得ているのだ。もしもの時に備えて、あらゆる状況に対応できるよう、あらゆる「モノ」を携帯しておく。
それは、私の「安心」を確保するための、一種の儀式なのかもしれない。

具体的に見ていこう。

ボディクリームや香水をボトルごと持ち歩くのは、ライブの時にいつもつけているからだ。携帯用の容器に移し替えると、少しだけ香りが変わってしまう、という譲れないこだわりもある。

それに、アイドルに憧れながらオーディションを受けていた、アパレル時代から愛用している香水だから、瓶で振りかけるとその時の記憶が鮮明に蘇る。
初心に何度でも帰ることができる、私だけのタイムマシンなのだ。

ボディクリームは、毎回マッサージしたいというこだわりがあり、持ち歩き用に詰め替えるのが面倒、という現実的な理由もある。
こだわり強いのに面倒くさがり、それもまた私の性格だ。

しかし、それ以上に、人の役に立ちたい、という側面もある。
誰かの「困った」を、私の「モノ」で解決できた時の、小さな達成感と満足感。
それが、私の心配性をさらに加速させるのかもしれない。箱ティッシュも、余分に持っていき、メンバーや、以前働いていた時の同僚に貸すのが好きだった。鼻をかむだけでなく、ちょっとした汚れを拭いたり、何かを包んだり、その用途は無限大に思える。

リップは9本。マットなもの、色落ちしないもの、ティント、保湿系など、それぞれ異なる色や質感のものを、その日の気分や状況に合わせて使い分ける。その日の自分の気分が求めるリップを携帯していないと気が済まない。

この「心配性」という性格の根源は、一体どこにあるのだろうか。
幼少期の経験、過去のトラウマ、あるいは単に性格として備わっているものなのか。

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もともと忘れ物が多く、人に迷惑をかけたくないという強い思いから、過剰に荷物を持つようになった。
それは、自分なりに「変わりたい」という意志の表れでもあった。過去の自分を乗り越え、より頼りになる人間になりたい、という切実な願いが、大量の荷物という形となって現れたのだ。

「もしもの時」に備えることへの執着は、私にとって単なる準備ではない。それは、漠然とした不安という名の感情に、形を与え、それをコントロールし、そして精神的な安定という名の確かな拠り所を得るための、私なりのルーティンであり、儀式なのだ。

荷物の重さは、そのまま「安心感の重さ」と言い換えることができる。肩から出血するほどの経験は、この安心を確保するための儀式がいかに徹底され、そして、それが私にとってどれほど切実なものであるかを示す、痛ましい、しかし揺るぎない証拠で、勲章なのだ。

「もしも」への備えは、私に「私なら大丈夫」という自信を与えてくれる。それは、自信のなさの裏返しであり、同時に、自信をつけようとする努力の表れでもある。

私の収集癖、そして、常に大量の荷物を持ち歩くという行動。これらは、すべて、記憶への苦手意識や、物への安心感を求める、私の内面と深く結びついている。

モノに記憶を託し、モノに安心を求める。それは、一見非効率で、理解されがたい行動かもしれない。しかし、私にとっては、自分自身を保つための、そして、記憶の断片を繋ぎ止めるための、切実な方法なのだ。

私の部屋に溢れる「モノ」たちは、私が自分自身を理解し、そして、この不確かな世界で、確かに生きていくための、大切な「箱」だ。

その箱の中には、過去の私、現在の私、そして未来への希望が、様々な形の「モノ」となって、大切にしまい込まれている。
この箱を開けるたび、私は自分自身と向き合い、そして、また新たな一歩を踏み出す力を得ているのだ。それは、時に重く、時に埃をかぶっていても、私にとってはかけがえのない、私だけの宝物である。

満たされたい気持ちと、失いたくない気持ち。その両方を抱えながら、私は今日もモノに触れ、安心を確かめている。

きっとこれからも、この不器用なバランスのまま、それでも自分なりに折り合いをつけながら、生きていくのだと思う。

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いかがでしたか?

今回は、私の収集癖をテーマに執筆させていただきました。

私は毎日日記を書いているのですが、文章を書くことはもともと得意ではなく、読書しないどころか漫画すら読み聞かせしてもらうような人間です。

ですが、今回コラムを執筆さていただくにあたり、自分と向き合ったうえで文章にしたいという想いがあります。

そのため、みなさんに向けつつ、自分を分析しながら書いた本編は常体で構成してみました。

全4回、残りのコラムも私らしく、そして、普段の私からは見えない部分をお見せできるような文章を書いていきたいと思います。

次回もお楽しみに!

PROFILE

兵頭美波(アップアップガールズ(2))

ひょうどう・みなみ
2002年12月31日生まれ。千葉県出身。 メンバーカラー・赤
趣味:アイドルを応援すること、日記を書くこと。特技:トランペット、リボン結び。


オフィシャルホームページ

https://upupgirls2.jp/

文・写真/兵頭美波(アップアップガールズ(2))