中国の地下アイドルって、その先がないんです
なるほど。ステージではどんな曲をやってるんですか?
- lulu
最初はほぼ日本の楽曲のカバーですね。お祭り系のグループに人気なのは「FES☆TIVE」とか「アキシブproject」とか。あとはロック系も人気で、「AIBECK」とか「我儘ラキア」とか。
たしかに地下寄りですね。日本のメジャーアイドルグループである、ハロプロだったり、48グループのカバーはやらないんですか?
- lulu
そこまでじゃないですね。やっぱり地下が好きなオタクがメンバーや運営になっているので。現場の雰囲気としても、とにかく騒げる曲を求めています。アイドルフェスがあると、お祭り系やサーフ、リフトがしやすいロック系の曲が多いです。
オリジナル曲っていうのはない?
- lulu
中国語のオリジナル曲は少ないですね。そもそもアイドルがいなかったから、中国の作曲家はアイドルの曲を書けないんですよ。日本だと80年代とかから、ハロプロやAKB48とか、受け継がれているものがあると思うんですけど、中国はまだその段階じゃなくて。
もちろん中国のポップスとかありますけど、現場で盛り上がらない。オタクは日本のアイドル文化が好きで、可愛い子が日本の曲を歌うのを楽しみに来てるんです。「中国語の曲を聞くと現実に戻っちゃうから嫌」ってオタクもいますね。
日本の洋楽好きとも通じる考えかもしれないですね。じゃあ新曲とかもそんなに。
- lulu
正直、2022年ぐらいまで、ほぼ全部カバー曲だったと思います。でもグループが増えてくるにつれて、箱が足りなくなっちゃったんですよ。そこで「ライブハウスに出るにはオリジナル曲がないとダメです」って流れになってきちゃったんです。昨年、TIFのアジアツアーが上海に来たんですけど、参加するには「全曲オリジナルが出演条件」になってました。そういう経緯もあって新曲が増えていますね。
でも、先ほども話しましたが、中国はクオリティが追いついてないので、日本人に依頼するケースも多くて。昨年、北京の「阵雨电台(ShowerSound)」がヤマモトショウさんに曲を依頼したり、先日も「凌晨12点(Begin Midnight)」というグループが日本のサウンドプロデューサーを迎え入れて話題になりました。

メンバーはどういう子がなるんですか?
- lulu
95%が兼業かもしれないです。大学生が一番多い。中国は高校までは絶対に勉強をしなきゃで、中高生でアイドルデビューっていうのは基本ないんです。大学に入って、4年間だけやりたいことができて、そのあとは大学院へ行くか、就職して結婚っていうのが真っ当な人生。親もそれを望んでいるから、アイドルをやれるのは学生の4年間しかない。
大学生しかできないって! 厳しい環境なんですね。
- lulu
あとは中国って、アイドルのその先がないんですよ。日本だったら女優とか歌手とか、タレントとかあるけど。中国は女優だったら大学の芸能コースとか、歌手もそういう学校に行ってないとなれないんです。もしくはオーディションでグランプリを取るしかない。
アイドルを続けた先がないというのは厳しいですね。
- lulu
だからこそ、その大学の数年間を全力で輝こうって頑張ってる子も多いです。
その時期しかできないって、リアル「さくら学院」ですね。
- lulu
でも、アイドルを続けたいと思ってる子はいて、事務所に就職という形にしてアイドルを続けるとか。徐々に変わりつつもあります。
でも、アイドルの先がないというのは、簡単には解決しなさそうですよね。
- lulu
そうなんですよね……。でも日本へライブをやりに行くグループが増えていて。日本へ行くことが彼女たちの目標になりつつあります。
確かに日本だったらアイドルのマーケットも大きいですしね。