アイドルはメチャクチャかっこいい職業
では、第五条。最後はアイドルとしての哲学じゃないですけど、美学みたいな。アイドルとはこうあるべきみたいな精神的な部分とかあると嬉しいなと。
【その5】「アイドルは結局、根性論」
- 柏木
結局、根性論というか。こんな時代に良くないかもですけど、それがいちばん大事な気がしますね。アイドルってめっちゃ大変なこと多いので。嬉しいこともあるぶん、メンタル的にもアイドルじゃなかったらこんな思いしなくていいのにってことが山ほどある。
ですよね。
- 柏木
ファンの方から何か嫌なことを言われるのもそうだし、あとアイドルって何でもやるじゃないですか。歌って踊って、ステージに立ちたいと思って入ってきたのに、バラエティみたいに体を張ったり、対決させられたり、選挙をやったり。結局とにかく頑張るしかないっていう。頑張ることをやめたら、ファンに応援してもらえないし、走り続けるしかない。
きついですよね。たしかに「最後は根性」かも。休みは取れるんですか。お休みの日はあるかもしれないけど、心が休まる日ってあります?
- 柏木
そういう意味では休みは全然ないですね。常にSNSを更新しますし、エゴサしちゃうし。休みの日があっても常にAKB48なんで。お仕事を始めて17年間、全部をオフったことは1回もないと思います。携帯の電源を切らない限りオフれない。
切っちゃえばいいのに。
- 柏木
でも怖いですね。やっぱり止まることが……。SNSを更新しなかったり、人が何をしてるかとか、ファンの方が何を言ってるかってチェックしないと、もう怖い。気が済まない。
……どうしてそこまで?
- 柏木
そうやって見ていれば、ファンの方が求める“ゆきりん”と自分にギャップが生まれないというか。常にファンの意見とか、世の中の見え方をキャッチしてると、何かを発信するときに失敗しない確率が上がるんです。何かを決める前に「今の私のファンはこう思ってるからこうしよう」とかって考える指針にしています。アイドルって1個の失敗がすごいから。「ファンは今、何を求めてるのか」を常にチェックしておかないと不安ですね。
「私は私」だったら、そんなこと気にしなくていいと思っちゃうけど違うんですね。
- 柏木
違いますね。私の場合は。
あまり人の意見を気にしないアイドルもいますけど。
- 柏木
それも覚悟を決めてると思うので。ただ単純に私がそういう感じだったっていうだけで。自分に合うやり方と、どうしたらファンが喜んでくれるかを見つけるのも難しいし、見つけてもそれをキープするのも難しいから。「もうここまで来たら大丈夫!」ってことがない世界ではあるなと。
すごいですね。それにしても根性ってそんなにつくものですか?
- 柏木
私はAKB48にいたことが大きい気がします。そこで培われましたね。元々メチャクチャ意思が弱いし、体も弱いし、先輩が怖いとかですぐ逃げたくなるタイプだったから。
ありがとうございます。「柏木由紀が全アイドルに残したい五ヶ条」。結果、柏木由紀の今までを振り返る感じにもなりました。では最後に、ファンではなく、すべてのアイドルの人たちにメッセージをいただけますか?
- 柏木
私はアイドルを17年やって、まもなく卒業だけど、本当にアイドルになってよかったって思うし、生まれ変わっても絶対アイドルになりたいって思うぐらい、本当にアイドルが好きです。
「私、アイドルになりたい」って自分がやりたいと思ってアイドルを選ぶ人が多いと思うんですけど、なってみたら人のためにやることが多いんです。でもそれってすごい素敵なことで。「人に喜んでほしい」とか、そういう気持ちでアイドルをやってるのはすごくいいなって思うし。アイドルってかっこいいと思うんです。私は、そう言われたらいちばん嬉しいです。
いろんなお仕事がある中でアイドルを選んで、ファンと向き合って、しかもいつまでできるかわからないじゃないですか。それでもやりたいことや夢に向かって突き進むアイドルは、メチャクチャかっこいい職業だと思うから、色んなことに負けずに、楽しいことをいっぱい見つけてやっていってほしいなって思います。
柏木由紀のラストメッセージ。コボレ話&アナザーカットは『ガラスガールNEXT』で!
PROFILE
柏木由紀(AKB48)
かしわぎ・ゆき
1991年7月15日生まれ 鹿児島県出身B型
4月30日の劇場公演でAKB48を卒業する。
AKB48 63rd Single『カラコンウインク』で、自身初の単独センターに。好評発売中!
コスメブランド『upink』プロデュース。
オフィシャルホームページ
https://www.akb48.co.jp/取材・文/関根弘康 & ガラスガール編集部 撮影/武田敏将