「好き」とか「愛してるよ」って意外と優しくないんです
【その3】「アイドルとファンでなく、人対人」
第三条です。柏木さんって“握手会の女王”と呼ばれていましたが、特典会でファンと話すときとかで何かありますか?
- 柏木
1対1のときは、「人対人」でしゃべるというか。アイドルとファンっていうより、学校や職場で知り合った人と思ってしゃべるようにしてましたね。
私的に“アイドルとファン”と思ってしゃべると、過剰に喜ばせようとしてしまうんですよ。よく握手会の現場で左右のレーンとかから「好きだよ~。ありがとう!」とか言ってるのを聞くんですけど、あれ、中身がないんですよ。「おかえり、お兄ちゃん!」とか言って。いや、おじさんじゃんみたいな。
それ言わないであげて(笑)。
- 柏木
(笑)。「好き」とか「愛してるよ」って、誰が来ても同じやり方だから、それって意外と優しくないんですよ。人としてちゃんと向き合ってないなと思っちゃう。
まずは「来てくれてありがとう」ってお礼を言う。で、なぜ来てくれるか、どういう人なのかとか。話を聞いてほしいタイプなのか、私の話が聞きたいタイプなのかとか、そういうのをしっかり判断して、その人が嬉しいと思う会話をするというか、心がけていますね。「好き」とか「愛してるよ」みたいな1回の喜びよりも、「毎週行って、話をするのが楽しい!」と思ってもらえるようにというのはすごく心がけてました。
なるほど。相手が柏木さんに何を求めているのか。アイドルを求めているのか。友達っぽい関係を望んでいるのか。恋人なのか、それともお姉さんになってほしいのか。後輩扱いをしたいのか、とか。
- 柏木
敬語でしゃべってくる人はたぶん私のことをアイドルとして見てるな。タメ口は仲良くしたい。そういうのから情報を知って。冷たくされて嬉しい人もいるし、全肯定してほしい人もいれば、悩み相談したい人もいて、もう100人いれば100人の求めてる対応があるから。それを探って、その人に合った対応と、その人のことを知りたいという気持ちを持つことが大事だと思います。
手が震えちゃって何もしゃべれないみたいな子には、テレビで見ている“アイドル・ゆきりん”を出します(笑)。ちゃんとその人にあった対応をするようにしていますね。
すごい! 普通にビジネスでも役にたつ観察眼ですよ!
【その4】「イメチェンに悩んだらいったんやってみる」
アイドルはビジュアルに悩んでる人が多いと思うんです。人によって好みが違うし、イメチェンどうしようとか、急に色染めるとかあるじゃないですか。やってるうちにわけわかんなくなるコもいたり。柏木さんは17年やって、いろいろと試していると思うのですが。
- 柏木
確かに色々やったかもしれないですね。でも初期の黒髪ロングのストレートで、前髪があってという、あまり奇抜なことをしないっていう時期が長くて。
確かに柏木さんといえばそのイメージが強いです。
- 柏木
ビジュアルってすごく残るものだけど、だからこそ、髪を染めてみたいとか、メイクも変えたいって気持ちはすごいわかるし、変えたくないって気持ちもわかるし。
でも私は1回試してみていいと思います。私も一昨年に髪の毛を一瞬ピンクにしたんですよ、ピンクが好きだから、いつかピンクにしたいと思っていて、でもなかなかできなかったんです。でも『根も葉もRumor』のシングルの時期で、周りにひぃちゃん(本田仁美)とか、髪の明るいコがいっぱいいて。それで思い立ったら今やんなきゃって、やったんですよ。
ピンク髪の柏木由紀!! ファンの反応はいかがでした?
- 柏木
結果、そんなに悪口とか言われなかったけど戻しました。めっちゃ満足したんですよ。しかも、「ピンク似合わない!」ってわかりました(笑)。
それはやってみないとわかんないですよね。
- 柏木
何を言われても自分はこれが好きって思ったら続ければいいし、何か言われて耐えられないとか、私みたいに似合わなかったと思ったら戻せばいい。「やらないことの後悔」って言うじゃないですか。ビジュアル面はすぐに戻せるから! 1回チャレンジしてみるのはありだなって、自分の経験上は思います。
自分に似合うものと、ファンが求めてるものは違うことあるし。グループの中のバランスでも、自分はこういう感じがベストかなっていうのを、私も結構時間かかってたどり着きました。結果として私はあんまり奇抜なことはしない。おしゃれすぎる髪型もしない。
おしゃれすぎる髪型しないんですか。
- 柏木
似合わないし、あんまり好きじゃないんですよね。というか、衣装をもらった時に似合う髪型はこれ、こっち系は似合わないってのがわかる。髪の毛をポニーにしたり、おろした方が可愛く見えるとか。でもそういうのって自分で研究して見つけるしかないですね。
アイドルの場合は衣装によるところ大きいですよね。
- 柏木
衣装で髪型とメイクはめちゃくちゃ変えるようにしてますね。でも、そこまでするようになったのは最近かも。あとビジュアル面は、体型とかの維持も難しいじゃないですか。私はたまたまどれだけ食べても太ったりしないタイプだから良かったんですけど、でも自分が衣装を着て、鏡やテレビで見た時に自分のテンションが下がる状態にはしたくないなっていうのはずっと思ってますね。テレビで見た時に衣装を可愛く着れてるとか、可愛いって自分が思えるレベルをずっと保ちたいっていうのはあります。
ビジュアル面で、やりたくてもやらなかったこととかはありますか。
- 柏木
表に出るときの服は結構意識していましたね。握手会の私服と、プライベートの私服は違いますね。Tシャツとデニムがいちばん楽で好きだけど、何年か前、それで握手会に行ったら「今日は服が手抜きだね」って言われたんですよ。受け取る側がそう思ったら、もうそうだから。自分の好きなものとファンが求めてるものは違うんだなって。それ以降はワンピースとか花柄とか、可愛い、ちゃんとファンが「ゆきりんだ!」って認めるような服を選ぶようになったというのは、アイドルならではかも?
後輩や、アイドルを目指すの子たちにもそう伝えたいですか?
- 柏木
いや、今の子たちは、めっちゃ私服ちゃんとしてます。もうわかってるんだと思いますよ。握手でも部ごとに服を変えたり、髪型を変えたり、AKB48の後輩はすごいできてますね。
なるほど。ちなみに最近は個性が認められる時代じゃないですか。「私らしく」とか、「私は私」って主張することが良いとされる風潮があると思うんです。柏木さんは、アイドルとしてはそこをどう考えていますか?
- 柏木
「自分らしく」、「私らしく」。いいと思います。でも自分自身がそう思えるようになったのは、ここ数年ですね。もちろんファンが喜んでくれることをやりたいけど、違うと思ったことはやらないぞっていうスタンスになりました。
昔は違ったんですか?
- 柏木
昔は、「私は私だから、こういうことはやりたくない」ってなると、応援してもらえないし、上には行けないと思っていたから、ちゃんとファンの求めてるものをやってきたんです。でも今はもう上辺じゃなく、中身で好きになってくれる人がある程度いるなって思えるようになったから、「違うことは違う」ってなりました。
でもずっと聞いてて思ったのが、目指す“THEアイドル”よりも、“柏木由紀というアイドル像”を守っている感じがします。
- 柏木
かもしれないです。さっき言ったような、明るくて元気でいたいとかも、自分になるべく近づけていくため努力だったかもしれない。