昨年12月8日、AKB48は結成20周年を迎えた。前田敦子、高橋みなみ、小嶋陽菜、指原莉乃のOG4名を迎えたシングル『Oh my pumpkin!』のリリース、日本武道館公演4DAYS、『MUSIC STATION SUPER LIVE』、そして『NHK紅白歌合戦』。この20周年ロードに、かつてAKB48に熱狂した者はSNSで興奮を報告した。現役メンバーはこの現象をどう受け止めているのだろう。また、4月に待ち受けている代々木第一体育館3DAYSにどう立ち向かっていくのだろう――。
それは20周年のご褒美のようなものだった
大晦日、AKB48は結成20周年イヤーの集大成とも言うべき時間を迎えようとしていた。2019年以来、6年ぶりとなる『NHK紅白歌合戦』に出場するのだ。2007年に「アキバ枠」として初出場を果たし、2009年からは毎年出場していた『紅白』にAKB48が帰ってきた。
もちろん目玉はOGの出演だ。前田敦子、大島優子、高橋みなみ、小嶋陽菜、指原莉乃ら8名が集結し、現役メンバーとともに歌い踊る。数日前、『Mステ』の特番でもOGが出演したが、やはり『紅白』は格別だ。
AKB48の出番は21時18分。20周年SPメドレーとして4曲を披露するという。歌う直前、司会の有吉弘行が「現役のメンバーは相当嫌でしょうねぇ」とかますと、「いやいや」と手を振る現役たち。有吉は前田、大島、指原、高橋には話を振るも、現役がしゃべる場面は与えられなかった。一瞬だが、峯岸みなみの表情も抜かれた。
メドレーは『フライングゲット』からスタート。真ん中で前田が両手を上げると、あの頃の記憶がよみがえる。カメラは順にOGを抜いていった。
大島が「1、2、3、4!」と叫ぶと、『ヘビーローテーション』が始まる。小栗有以と向井地美音、伊藤百花と千葉恵里の現役がそれぞれ2ショットで抜かれる場面もあったものの、やはり主役はOGだった。
すっと前列に出てきた指原がセンターに入れ替わると、『恋するフォーチュンクッキー』だ。終盤では大島、小栗、八木愛月らが変顔を見せた。
4曲目の『会いたかった』では「AKB」「20」の人文字を作り、前田と大島の2ショットで出番は終わった。時刻は21時23分。AKB48は『紅白』でおよそ5分の時間をもらった。それは20周年のご褒美のようなものだった。
私は、OGが20周年記念シングルに参加するならば、『紅白』復帰はあると考えていた。11月の出場歌手発表の時点では、AKB48の名前はなかったが、『紅白』は○○周年を好む傾向にあるため、まだ“ある”と見ていた。結果、AKB48の出場が後日追加で発表された。
かくしてAKB48は国民的番組にカムバックを果たした。OGの一時復帰は、AKB48を『紅白』までワープさせるカードとして十分に通用したということだ。
もしかしたらOGたちは「これが最後の奉公」と考えているのかもしれない。「今の自分があるのはAKB48のお陰。だったら、20周年に協力しないわけにはいかない」と。OGたちは軒並み30代半ば。10年後の30周年にこれだけのメンツが揃い、歌うことは現実的に考えにくい。
この現実に現役メンバーは何を思うのだろうか。
今の現役のみでは『紅白』に出演することは難しい。そんなことは言われなくても、彼女たちは理解している。だが、諦めたわけではない。現役が掲げている目標は東京ドームだ。『紅白』だって意識しているはずだ。
では、具体的にどのような道筋で東京ドームに辿り着くのか。そんなことは誰にもわからない。十数年前だってそうだった。時に間違えたり、炎上したりしながら道を拓いていった。ならば、2020年代もきっとそうだろう。答えを探しながら歩いて行くしかない。
「思い出とケンカしても勝てねぇよ」
プロレスラー・武藤敬司の言葉だ。新日本プロレスに属していた武藤は、アントニオ猪木の残したものに苦しんでいた。闘いを前面に押し出す猪木のプロレスは、多くのファンを魅了した。しかし、それは猪木にしかできないプロレスだった。ゆえに後輩たちは猪木の遺産に苦しめられてきた。同じプロレスはできない。だったら、違う表現をするしかない。とりわけ武藤は猪木の色からできるだけ遠く離れたプロレスを展開し、自らの価値を上げていった。「思い出」とは、猪木のことでもあり、猪木に魅了されたファンの心に、こびりつくようにいて宿っているものでもある。
あの頃のAKB48とケンカしても勝てない――。この半年間、現役メンバーはそんなことを痛感したのではないか。それくらいのことはわかってはいたはずだ。しかし、それを肌で感じたのは初めてのことだった。
12月上旬の日本武道館コンサートでは、OGが登場する度に黄色い歓声が上がった。歓声というよりも、それは悲鳴だった。明らかに通常のコンサートとは違う雰囲気であり、ラジオ番組で小栗が発言したところによると、武道館の応募倍率は「東京ドームを埋められるくらい」だったという。いくら現在のAKB48に若い女性ファンが戻ってきたといっても、2010年代前半の熱狂には勝てない。
武道館のある公演では、さっきまで熱狂していた会場が、現役のみのパフォーマンスとなった瞬間、静まり返った。目当てではなかったからだし、現役のことを知らないファンばかりだったからだ。それは屈辱の瞬間だった。ホームなのにアウェイを味わったわけだ。
最終日の夜公演。Wアンコールで総監督の倉野尾成美は「悔しい」と言った。それは偽らざる本音だった。倉野尾だけではなく、現役たちの共通認識だった。その悔しさは少なくとも大晦日まで続いた。
この悔しさを引っ提げて、AKB48は代々木第一体育館のコンサートに挑む。4月3~5日の3DAYSだ。昨春、AKB48は東京ガーデンシアター3公演を埋めている。キャパは8000だ。ステージの組み方によっても変化するが、代々木第一はガーデンシアターよりもやや広い会場だ。もうOGの力は借りられない。21年目からは自力の勝負が続いていく。
だからこそ、だ。だからこそ今のAKB48を応援しなくてはならない。断言しよう。この先、AKB48がどこまで進めるのかを見届けることは、ファンとして最高の体験となる。今のAKB48には“逆襲”の文字がよく似合う。
文/犬飼 華
